死刑の量刑が維持された事例(秋葉原無差別殺傷事件)
判旨
死刑制度(執行方法を含む)が憲法13条、31条、36条に違反しないことは当裁判所の判例とするところであり、本件のごとき極めて重大な刑事責任が認められる無差別殺人事件において死刑を選択することは妥当である。
問題の所在(論点)
周到な準備に基づく無差別殺人事件において、被告人の境遇や前科のないことを考慮しても、死刑の科刑が量刑不当として憲法違反または刑訴法411条違反とならないか。
規範
死刑の選択が許容されるか否かは、犯行の性質、動機、態様、特に殺意の強固さ、結果の重大性(殺害人数等)、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情勢等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる(永山基準参照)。
重要事実
被告人は、インターネット掲示板や職場での嫌がらせに対する怒りから、無差別殺人を計画。トラックを歩行者天国に突入させて3名を殺害、その後ダガーナイフで逃げる通行人を次々と突き刺し4名を殺害(計7名死亡、10名負傷)。さらに逮捕を免れるため警察官にもナイフを突き出した。被告人は派遣社員としての不満や孤独感を深めていたが、前科前歴はなかった。
あてはめ
本件は周到な準備と強固な殺意に基づく残虐な態様による無差別殺人であり、7名殺害・10名負傷という結果は極めて重大である。動機は社会への不満や私憤によるもので酌量の余地がない。社会的衝撃の大きさや遺族の峻烈な処罰感情に照らせば、前科がない等の事情を考慮しても刑事責任は極めて重大といえる。したがって、死刑を選択した一審判決を維持した原判決は正当である。
結論
事件番号: 平成17(あ)1622 / 裁判年月日: 平成20年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不特定多数の利用客がいる駅構内において、あらかじめ準備した刃物を用い、無差別に多数人を殺傷した行為は、冷酷かつ非道な犯行であり、死刑の適用もやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、秋葉原の歩行者天国にトラックで突入して通行人をはね、さらに、あらかじめ準備していた刃物を用いて、通行人や駅利用者等…
本件死刑判決は、その罪責の重大性に照らし妥当であり、憲法違反や量刑不当の主張には理由がないため、上告を棄却する。
実務上の射程
無差別殺人事件における死刑適用の判断枠組みの再確認。特に、多数の被害者を出した残虐な犯行においては、動機に酌量の余地がなく結果が重大であれば、前科の欠如等の好意的事情を凌駕して死刑が是認されることを示した。
事件番号: 平成15(あ)2619 / 裁判年月日: 平成19年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法31条、36条に違反せず、動機に酌量の余地がない無差別殺傷事件において、2名の殺害という結果の重大性や社会的影響に鑑みれば、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、日本社会への強い不満から無差別に人間を殺害しようと決意し、包丁と玄能を準備。白昼の繁華…
事件番号: 平成24(あ)193 / 裁判年月日: 平成26年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法11条、13条、31条及び36条に違反しない。また、元厚生事務次官らに対する連続殺傷事件において、執拗な殺意、極めて高い計画性、冷酷残忍な犯行態様、及び重大な結果に照らせば、被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、幼少期の飼い犬の殺…
事件番号: 平成21(あ)1640 / 裁判年月日: 平成25年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が検討される事案において、組織的背景に基づく犯行の性質、殺意の強固さ、結果の重大性、地域社会への影響、及び被告人の役割を総合的に考慮すれば、たとえ遺族の一部に宥恕の意思があり、被告人が暴力団を脱退したなどの情状を考慮しても、死刑に処した判断は是認される。 第1 事案の概要:暴力団員である…
事件番号: 平成29(あ)621 / 裁判年月日: 令和元年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無差別殺人であっても、事案により被害結果や動機、計画性の有無、犯行遂行の意思の強固さは様々であり、これらを総合して非難の程度を判断すべきである。2名の生命を奪った残虐な無差別殺人であっても、精神障害の影響や計画性の欠如、自首に近い状況等の諸事情を考慮し、死刑の選択が相当とはいえない場合がある。 第…