死刑の量刑が維持された事例(元厚生事務次官宅連続襲撃事件)
判旨
死刑制度は憲法11条、13条、31条及び36条に違反しない。また、元厚生事務次官らに対する連続殺傷事件において、執拗な殺意、極めて高い計画性、冷酷残忍な犯行態様、及び重大な結果に照らせば、被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
1.死刑制度の合憲性。2.永山基準に照らし、2名の殺害及び1名の殺人未遂等の事実がある本件において、死刑の選択が相当であるか。
規範
死刑の量刑判断にあたっては、犯行の性質、動機、態様、特に殺意の強弱、執拗性、残虐性、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡の見地からも一般予防の見地からも極めてやむを得ない場合に、死刑の選択が許容される(永山基準の枠組みを維持)。
重要事実
被告人は、幼少期の飼い犬の殺処分に対する「仇討ち」という独善的な動機から、元厚生事務次官らに対し強固な殺意を抱き、入念な計画を立案した。宅配業者を装って元次官宅を訪問し、元次官及びその妻の胸部等を包丁で数回突き刺し殺害(2名死亡)。さらに別の元次官宅で妻を刺し重傷を負わせ(1名未遂)、別の元長官宅付近で刃物を所持し殺人を予備した。被告人には完全責任能力が認められ、前科は罰金刑のみであった。
あてはめ
動機は独善的で酌量の余地がなく、確定的かつ強固な殺意に基づき、日時・凶器・手段を周到に準備した極めて計画性の高い犯行である。殺害方法は無防備な被害者の胸部を数回突き刺す冷酷かつ残忍なものであり、2名の生命を奪い1名に重篤な後遺症を負わせた結果は誠に重大である。被害者側の処罰感情も峻烈であり、元高官を狙った連続犯行として社会に与えた衝撃も大きい。前科がない等の事情を考慮しても、刑事責任は極めて重大である。
事件番号: 平成7(あ)1084 / 裁判年月日: 平成11年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法13条、36条に違反しない。また、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性に照らし、被告人の事情を考慮しても死刑の科刑がやむを得ない場合は、これを是認すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、交際相手Aが結婚に消極的になったことに憤激し、路上でAを大型ハンマーで多数回…
結論
死刑制度は合憲である。また、本件の犯行の罪責は極めて重大であり、第一審・控訴審の死刑判決を是認せざるを得ない。
実務上の射程
被害者が2名の場合であっても、強固な殺意や高い計画性、残虐な犯行態様などの加重要素が顕著であれば、永山基準に基づき死刑が維持されることを示した事例。死刑制度の合憲性については既存の判例を再確認している。
事件番号: 平成24(あ)1647 / 裁判年月日: 平成27年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度(執行方法を含む)が憲法13条、31条、36条に違反しないことは当裁判所の判例とするところであり、本件のごとき極めて重大な刑事責任が認められる無差別殺人事件において死刑を選択することは妥当である。 第1 事案の概要:被告人は、インターネット掲示板や職場での嫌がらせに対する怒りから、無差別殺…
事件番号: 平成15(あ)2277 / 裁判年月日: 平成19年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、憲法13条、31条、36条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、オウム真理教の教祖として、多数の教団幹部らと共謀の上、地下鉄車両内にサリンを散布し多数の死傷者を出した地下鉄サリン事件、松本サリン事件、及び坂本弁護士一家殺害事件を含む13件の組織的な凶悪犯罪を主導した。これらの犯行…
事件番号: 平成21(あ)1802 / 裁判年月日: 平成23年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用を検討すべき極めて重大な刑事責任が認められる事案であっても、殺意の程度(未必的殺意)や計画性の欠如、謝罪の態度等の有利な事情を総合考慮し、無期懲役刑を維持した原判決が甚だしく不当とはいえないと判断した。 第1 事案の概要:被告人は、離婚した元妻との復縁を求め、銃器を用いて警察官1名を射殺、…