死刑事件(安中親子三人殺害事件)
判旨
死刑制度およびその執行方法は憲法13条、36条に違反しない。また、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性に照らし、被告人の事情を考慮しても死刑の科刑がやむを得ない場合は、これを是認すべきである。
問題の所在(論点)
死刑制度の合憲性、および複数の殺害・殺人未遂におよんだ本件事案において死刑を選択することが刑訴法411条の量刑不当(死刑の適用基準)に照らして相当といえるか。
規範
死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、特に殺意の強固さや執拗さ、結果の重大性(殺害された被害者の数等)、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも死刑の選択がやむを得ないといえる場合に許される。
重要事実
被告人は、交際相手Aが結婚に消極的になったことに憤激し、路上でAを大型ハンマーで多数回殴打し殺害した。さらに、Aの両親が仲を裂こうとしたと邪推してAの実家に押し掛け、実父Bおよび実母Cを同様に殺害した。その後、Aの一族を皆殺しにしようと考え、隣接する実妹D方でDおよびその長女Eを殺害しようとしたが、取り押さえられ未遂に終わった。結果として3名を殺害、2名を殺害しようとした事案である。
あてはめ
まず、死刑制度は過去の判例に照らし合憲である。次に、犯行態様は金属製大型ハンマーで頭部等を多数回殴打するという執拗かつ残虐なものである。動機は一方的な邪推や憤激に基づくもので酌むべき点に乏しい。結果として3名の生命を奪い、さらに幼い子供を含む2名を殺害しようとした点は極めて重大である。被告人のために酌むべき事情(動機に至る経緯等)を十分に考慮したとしても、これら罪質、動機、態様、結果の重大性に照らせば、罪責は誠に重大であるといえる。
結論
被告人の罪責は誠に重大であり、死刑の科刑はやむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
いわゆる「永山基準」を踏襲した死刑適用に関する判断事例である。答案上は、殺害人数が複数に及び、かつ動機の身勝手さや態様の残虐性が顕著な場合、死刑選択の合理性を裏付ける先例として活用できる。また、死刑制度の合憲性についての簡潔な言及にも資する。
事件番号: 平成22(あ)402 / 裁判年月日: 平成24年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】5名を殺害し1名に重傷を負わせた事案において、動機に一定の酌むべき事情があり、親族である遺族の一部が死刑回避を望んでいる等の事情がある場合、死刑の選択を回避し無期懲役とした一審判決を維持した原判決は、刑の量定が甚だしく不当で破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。 第1 事案の概要:…
事件番号: 平成24(あ)193 / 裁判年月日: 平成26年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法11条、13条、31条及び36条に違反しない。また、元厚生事務次官らに対する連続殺傷事件において、執拗な殺意、極めて高い計画性、冷酷残忍な犯行態様、及び重大な結果に照らせば、被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、幼少期の飼い犬の殺…
事件番号: 平成15(あ)2277 / 裁判年月日: 平成19年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、憲法13条、31条、36条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、オウム真理教の教祖として、多数の教団幹部らと共謀の上、地下鉄車両内にサリンを散布し多数の死傷者を出した地下鉄サリン事件、松本サリン事件、及び坂本弁護士一家殺害事件を含む13件の組織的な凶悪犯罪を主導した。これらの犯行…
事件番号: 平成13(あ)1401 / 裁判年月日: 平成17年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の極めて重大な罪を犯した被告人に対し、犯行の態様が冷酷かつ残忍で結果が甚大であり、前科関係や動機にも酌むべき点がない場合、不遇な成育歴等の事情を考慮しても、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、約半月の間にスナック等の女性経営者計4名を窒息死または失血死させて現金を強奪する…