訴訟費用負担の裁判の執行について,刑訴法490条1項による徴収命令の出される前であっても,同法472条による検察官の執行指揮に基づく納付告知及び督促があったときは,同法502条の異議申立てをすることができる。
検察官の執行指揮に基づく納付告知及び督促があったときの訴訟費用負担の裁判の執行に関する異議申立ての許否
刑訴法472条,刑訴法490条1項,刑訴法502条
判旨
訴訟費用負担の裁判につき、検察官の執行指揮に基づき事務官が送付した納付告知書や督促状は、刑訴法502条の「執行に関し検察官のした処分」に該当し、徴収命令の前であっても異議申立てが可能である。
問題の所在(論点)
刑訴法490条1項に基づく具体的な徴収命令(強制執行の着手)がなされる前の段階において、検察官の執行指揮に基づく納付告知書や督促状の発付が、刑訴法502条の「執行に関し検察官のした処分」に該当し、異議申立ての対象となるか。
規範
刑訴法502条にいう「執行に関し検察官のした処分」とは、検察官の執行指揮の内容を告知し納付を催促する目的でなされた行為を含む。徴収事務規程に基づき、検察官の命により送付される納付告知書や督促状はこれに該当し、刑訴法490条1項による民事執行上の「徴収命令」が発せられる前であっても、当該処分を対象として異議を申し立てることができる。
重要事実
窃盗被告事件で訴訟費用負担の裁判が確定した申立人に対し、最高検察庁検察官は執行指揮(刑訴法472条)を行い、これに基づき事務官が納付告知書及び督促状を順次送付した。督促状には期限内に納付しない場合に強制執行の手続をとる旨の通告が含まれていたが、現時点で検察官による徴収命令(民事執行法上の債務名義としての性質を持つもの)は出されていなかった。申立人は、支払能力がないことを理由に、これら一連の執行に関し異議を申し立てた。
事件番号: 昭和56(す)52 / 裁判年月日: 昭和56年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判費用負担の裁判の執行に関する異議申し立ては、刑訴法502条に基づき、当該裁判を言い渡した裁判所に対してなされるべきである。最高裁判所が言い渡した裁判以外の執行に関する異議を最高裁判所に申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、東京簡易裁判所、東京高等裁判所、及び最高裁判所がそ…
あてはめ
検察官による訴訟費用の執行指揮がなされ、これに基づき徴収事務規程に従って送付された納付告知書及び督促状は、検察官の執行指揮の内容を具体的に告知し、義務の履行を催促する性質を有する。これらは実質的に検察官の命に基づき行われる一連の執行手続の一環といえる。したがって、これらに対する異議申立てを認めることが、執行の適正を担保する刑訴法502条の趣旨に合致する。もっとも、本件では単なる支払不能を理由とする免除請求にすぎず、処分の不当をいうものではないため、実体上の理由は認められない。
結論
納付告知書や督促状は「検察官のした処分」に該当し異議申立ての対象となるが、本件の申立ては理由がないため棄却される。
実務上の射程
刑事手続における執行段階の救済手段として重要である。実務上、訴訟費用の執行を争う場合、差押え等の徴収命令を待つことなく、督促状等の段階で502条の異議を申し立て得ることが確定した。ただし、異議の理由は処分の違法・不当(手続的瑕疵等)である必要があり、単なる無資力は別途「訴訟費用執行免除」(刑訴法500条)の手続で主張すべき事項であることに注意を要する。
事件番号: 昭和29(し)5 / 裁判年月日: 昭和29年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下において高等裁判所がなした決定に対しては、訴訟法上特に最高裁判所の権限に属すると定められた抗告のみが許され、同法564条後段に基づく最高裁判所への即時抗告は認められない。 第1 事案の概要:本件は、旧刑事訴訟法564条前段に基づき高等裁判所がなした決定に対し、抗告人が同条後段を根拠と…
事件番号: 昭和54(し)25 / 裁判年月日: 昭和54年3月26日 / 結論: 棄却
一 刑法二三条は、自由刑に処する裁判を受けた者が当該事件に関して拘禁されている場合にその裁判確定の日から刑期を起算する趣旨の規定であつて、当該事件に関して拘禁されていない場合には、たまたま他事件に関し拘禁されていても同条一項の適用はない。 二 懲役刑の裁判確定当時他事件につき勾留され当該事件に関しては拘禁されていなかつ…
事件番号: 昭和29(す)145 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
申立人主張のような事由(訴訟費用負担の執行免除の申立を刑務官吏によつて妨げられた旨の主張)は、前記訴訟費用の負担を命ずる裁判について検察官のした執行に関する処分を不当とすべき根拠にはならないから、本件申立は理由がないものとして棄却すべきである。