一 刑法二三条は、自由刑に処する裁判を受けた者が当該事件に関して拘禁されている場合にその裁判確定の日から刑期を起算する趣旨の規定であつて、当該事件に関して拘禁されていない場合には、たまたま他事件に関し拘禁されていても同条一項の適用はない。 二 懲役刑の裁判確定当時他事件につき勾留され当該事件に関しては拘禁されていなかつた者について、刑期の起算日を裁判確定の日まで遡らせる刑の執行指揮をした検察官が、後に刑期の起算日を現実の刑の執行開始に照応するように訂正する措置は、右の者に対し実質的な不利益を課したと認めるに足りる特段の事情のない本件(判文参照)においては、刑訴法五〇二条にいう「不当な処分」とはいえない。
一 刑法二三条の法意 二 検察官の懲役刑の執行指揮に関する訂正措置が刑訴法五〇二条にいう「不当な処分」とはいえないとされた事例
刑法23条,刑訴法502条
判旨
刑法23条による裁判確定日からの刑期起算は、当該事件に関して拘禁されている場合に限られ、他事件での拘禁中には適用されない。そのため、一度誤った起算日で指揮した内容を現実の執行開始日に訂正する措置は、特段の事情がない限り刑訴法502条の不当な処分には当たらない。
問題の所在(論点)
他事件で拘禁中の者に刑法23条1項が適用され裁判確定日に刑期が遡及するか。また、一度なされた執行指揮の起算日を後から遅らせる訂正措置が、刑訴法502条の「不当な処分」に該当するか。
規範
刑法23条は、自由刑の裁判を受けた者が「当該事件に関して」拘禁されている場合に、裁判確定の日から刑期を起算する趣旨である。したがって、他事件に関して拘禁されているにすぎない場合には、同条1項の適用はない。また、検察官による刑の執行指揮の訂正は、それが現実の刑の執行開始に照応するものであり、かつ、受刑者に対し実質的な不利益を課したと認めるに足りる「特段の事情」がない限り、刑訴法502条にいう「不当な処分」には当たらない。
重要事実
事件番号: 昭和36(し)36 / 裁判年月日: 昭和36年8月28日 / 結論: 棄却
一 検察官が裁判の執行指揮その他の処分をする以前になされた裁判の執行に関する異議の申立は不適法である。 二 裁判の執行に関する異議において、裁判の内容そのものの不当を主張し、あるいは現行刑罰制度ないし行刑制度を非難することは許されない。
申立人は公務執行妨害等で懲役8年の判決を受け、上告棄却により刑が確定した。確定当時、申立人は本件については拘禁されていなかったが、他事件の勾留により刑務所に在監中であった。検察官は当初、本件裁判確定日を起算日とする執行指揮を刑務所長に伝達したが、後に、本件での拘禁がなかったことを理由に、起算日を執行指揮が伝達された日(現実の執行開始日)とする訂正措置をとった。申立人は、この訂正が不当であるとして異議を申し立てた。
あてはめ
申立人は本件裁判確定当時、他事件の勾留により在監していたが、本件に関しては拘禁されていなかった。そのため、刑法23条1項の適用はなく、確定日まで刑期を遡らせた当初の指揮は同条の法意に反する。検察官による訂正措置は、誤った指揮を現実の刑の執行開始に合致させるものであり、申立人に実質的な不利益を課したといえる特段の事情も認められない。したがって、適正な執行の確保という観点から、当該訂正は許容される。
結論
本件訂正措置は、刑訴法502条にいう不当な処分には当たらない。
実務上の射程
刑の執行に関する異議申立て(刑訴法502条)における「不当」の判断枠組みを示す。特に、刑法23条の「拘禁」が当該事件に限られること、および一度なされた検察官の執行指揮の訂正の可否について、実質的不利益の有無という基準を提示している点に意義がある。
事件番号: 昭和58(し)112 / 裁判年月日: 昭和58年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判の執行に関する異議(刑訴法502条)において、執行の基礎となる裁判自体の内容の不当を申し立てることは許されない。 第1 事案の概要:抗告人は、確定した裁判の執行に関して異議を申し立てた。その際、異議の理由として、裁判の内容そのものが憲法31条に違反するなどの不当性があることを主張した。 第2 …
事件番号: 昭和51(し)130 / 裁判年月日: 昭和54年5月1日 / 結論: 破棄差戻
在監者の上訴申立に関する刑訴法三六六条一項は、在監者が再審請求棄却決定に対し異議申立書を差し出す場合に準用される。
事件番号: 平成24(し)167 / 裁判年月日: 平成24年9月18日 / 結論: 棄却
刑訴法448条2項による刑の執行停止決定に対しては,同法419条による抗告をすることができる。
事件番号: 昭和56(す)63 / 裁判年月日: 昭和56年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法501条に基づく刑の執行に関する異議の申立ては、刑の言渡しをした確定裁判を対象とすべきであり、抗告棄却決定に対しては許されない。 第1 事案の概要:申立人が、抗告棄却決定を対象として刑訴法501条に基づく申立てを行った事案。 第2 問題の所在(論点):刑訴法501条に基づき、検察官の執行…