検察官が訴訟費用の裁判の執行のため発した徴収命令に対し、請求異議の訴えによってその効力を争うことは許されない。
検察官が訴訟費用の裁判の執行のため発した徴収命令に対する請求異議の訴えの許否
民事執行法35条1項,刑訴法490条,刑訴法502条,刑訴法504条
判旨
刑事裁判の訴訟費用徴収命令に瑕疵があることを理由とする争いは、刑事訴訟法上の特別の不服申立手続(502条、504条)によるべきであり、民事執行法上の請求異議の訴えによることは許されない。また、不適法で補正不能な訴えを却下した第一審判決に対する控訴につき、控訴審は口頭弁論を経ずに控訴を棄却でき、その際判決言渡期日の告知等も不要である。
問題の所在(論点)
刑事裁判の訴訟費用徴収命令の瑕疵を争う手段として、民事執行法上の請求異議の訴えを提起することが許されるか。また、不適法な訴えを却下した第一審に対する控訴を口頭弁論なしに棄却できるか。
規範
刑事訴訟法上、裁判の執行に関する検察官の処分については、言渡しをした裁判所に対する異議の申立て(同法502条)および決定に対する即時抗告(同法504条)という特別の不服申立手続が定められている。したがって、執行の根拠となる処分の瑕疵を争う場合、かかる特別手続によるべきであり、民事上の救済手段(民事執行法35条の請求異議の訴え等)を用いることはできない。
重要事実
上告人を刑事被告人とする訴訟費用負担の裁判につき、検察官がその執行として徴収命令を発した。上告人は、当該徴収命令に瑕疵があることを理由として、民事執行法に基づき、徴収命令に基づく強制執行の不許を求める請求異議の訴えを提起した。第一審が本件訴えを不適法として却下したところ、控訴審は口頭弁論を経ずに、かつ判決言渡期日の告知や呼出手続をすることなく控訴を棄却した。
あてはめ
刑事訴訟費用徴収命令は、裁判の執行に関する検察官の処分に該当する。刑事訴訟法502条および504条は、かかる処分の適否を争うための専用の不服申立手続を設けており、これは排他的な性質を有する。そのため、民事執行法上の請求異議の訴えによりその効力を争うことは、法が予定した紛争解決手続に反し、許されないといえる。また、本件訴えは不適法かつ補正不能なものであるから、控訴審において口頭弁論を経ずに棄却する措置(民訴法290条等参照)は正当である。
結論
検察官による徴収命令の瑕疵を理由に請求異議の訴えによることは許されず、本件訴えを不適法として却下した原審の判断は正当である。
実務上の射程
行政処分や刑事上の処分に基づく執行について、民事上の手続(請求異議の訴え)が排斥される場面を画定する射程を持つ。答案上は、民訴法上の訴えの利益や、公法上の特別の救済手続との排他関係が問題となる場面で、本判決の理屈を援用できる。また、不適法な訴えに対する控訴審の簡略化された審理手続の適法性を基礎づける際にも活用可能である。
事件番号: 昭和52(オ)633 / 裁判年月日: 昭和55年12月9日 / 結論: 棄却
一 執行文付与に対する異議の訴における事実審の口頭弁論終結時までに生じていた請求に関する異議事由を後訴である請求に関する異議の訴において主張することは許される。 二 民訴法三八九条一項により事件を第一審に差戻すか否かは、原則として、控訴裁判所の裁量に委ねられる。
事件番号: 平成26(す)765 / 裁判年月日: 平成27年2月23日 / 結論: 棄却
訴訟費用負担の裁判の執行について,刑訴法490条1項による徴収命令の出される前であっても,同法472条による検察官の執行指揮に基づく納付告知及び督促があったときは,同法502条の異議申立てをすることができる。