競売法による競売手続には民訴法第五四五条は準用されないものと解するのが相当である。
任意競売と請求異議の訴。
競売法第1章,民訴法545条
判旨
担保権の不存在を理由とする任意競売手続の停止・排除は、債務名義の存在を前提とする請求異議の訴えによつて行うことはできず、当該訴えは不適法である。
問題の所在(論点)
抵当権の不存在を理由として、任意競売(担保権の実行としての競売)手続の排除を求めるために、民事訴訟法(当時)の定める請求異議の訴えを提起することができるか。すなわち、債務名義を欠く任意競売への請求異議の訴えの準用が認められるかが問題となる。
規範
請求異議の訴え(民事執行法35条、旧民訴法545条)は、債務名義の存在を前提とし、その執行力の排除を目的とする訴えである。したがって、債務名義の存在しない任意競売(担保権の実行としての競売)の手続においては、その性質上、請求異議の訴えに関する規定を準用することはできない。
重要事実
被上告人(原告)は、抵当権の不存在を理由として、競売法に基づく競売手続(任意競売)の排除を求め、請求異議の訴えを提起した。第一審および原審は本案判決をしたが、上告人がこれを不服として上告した事案である。なお、本判決当時の法制度下では、任意競売において債務名義を必要としていなかった。
あてはめ
請求異議の訴えは、判決や公正証書といった「債務名義」に付与された執行力を、実体上の事由によって排斥する制度である。これに対し、任意競売は担保権という実体法の権利に基づいて開始されるものであり、債務名義の存在を前提としない。このように、手続の基礎となる構造が本質的に異なる以上、債務名義の存在を前提とする請求異議の訴えを任意競売に準用することは、その性質に反するといえる。したがって、任意競売に対して請求異議の訴えの手続を用いることは論理的に不可能であり、訴えの適法性を欠く。
結論
任意競売に対する請求異議の訴えは不適法であり、却下されるべきである。
実務上の射程
現行の民事執行法下においても、担保権の実行としての競売(180条以下)には、債務名義に対する請求異議の訴え(35条)は準用されない。抵当権の不存在や消滅を争う場合は、競売開始決定に対する執行抗告(182条)や、競売開始決定の取消しを求める「競売手続の停止・取消しを求める訴え」等、制度上予定された別の救済手段を用いるべきであることを示唆する。
事件番号: 昭和36(オ)1077 / 裁判年月日: 昭和38年3月29日 / 結論: 棄却
競売法第三二条第二項より準用される民訴法第六八七条によつて発せられた不動産引渡命令に対し、右命令の相手方より、その執行力の排除を求めるため、請求異議の訴を提起することは許されない。