競売法三二条によつて準用される民訴法(昭和五四年法律第四号による改正前のもの)六八七条によつて発せられた不動産引渡命令に対し、右命令の相手方より、その執行の排除を求めるため、請求異議の訴えを提起することは許されない。
不動産引渡命令に対する請求異議の訴えの許否
競売法32条2項,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)545条,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)559条1号,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)687条
判旨
不動産引渡命令は執行方法の一種にすぎず、債務名義の執行力を不可逆的に排斥する請求異議の訴えの対象とはならない。
問題の所在(論点)
不動産引渡命令を債務名義とする強制執行の排除を求める手段として、請求異議の訴えを提起することができるか。引渡命令の法的性質と、請求異議の訴えの対象性の有無が問題となる。
規範
不動産引渡命令は、その性質が「執行の方法」に外ならない。したがって、引渡命令の相手方がその執行の排除を求める手段として、請求異議の訴え(現行民事執行法35条参照)を提起することは許されない。
重要事実
上告人は、旧競売法32条(現行民事執行法83条相当)に基づき発せられた不動産引渡命令の相手方である。上告人は、当該引渡命令の執行を排除することを目的として、旧民訴法545条(現行民事執行法35条相当)に基づく請求異議の訴えを提起した。原審は、引渡命令に対する請求異議の訴えは不適法であるとしてこれを却下したため、上告人が最高裁に上告した事案である。
あてはめ
不動産引渡命令は、競売手続の付随的かつ簡易な救済手段であり、確定判決のような実体的な権利関係を確定するものではなく、あくまで「執行の方法」としての性質を有する。請求異議の訴えは、債務名義に表示された請求権の存否・内容を争うものであるが、執行方法の一種にすぎない引渡命令は、そもそも独立した実体法上の請求権を確定する債務名義としての性質に乏しい。したがって、執行方法の不備を争うべき引渡命令に対して、実体上の異議を主張する請求異議の訴えを用いることは論理的に相容れないものと解される。
結論
不動産引渡命令に対する請求異議の訴えは許されず、不適法である。
実務上の射程
本判例は旧法下のものだが、現行民事執行法83条の引渡命令についても同様の法理が妥当する。引渡命令に対する不服申立ては、執行抗告(民執法83条5項)によってなされるべきであり、請求異議の訴えを選択することはできないという実務上の鉄則を示すものである。答案上は、引渡命令の性質を「執行方法」と定義づける際に引用する。
事件番号: 昭和39(オ)613 / 裁判年月日: 昭和40年4月2日 / 結論: 破棄自判
競売法第三二条第二項により準用される民訴法第六八七条によつて発せられた不動産引渡命令に対し、右命令の相手方よりその執行力の排除を求めるため請求異議の訴を提起することは許されない。