不動産の引渡命令の発付を受けた買受人が当該不動産を第三者に譲渡したとしても、引渡命令の相手方は、右買受人に対して提起する引渡命令に対する請求異議の訴えにおいて、右譲渡の事実をもつて異議の事由とすることはできない。
不動産の引渡命令の発付を受けた買受人が当該不動産を第三者に譲渡した場合と引渡命令の相手方が右買受人に対して提起する引渡命令に対する請求異議の訴えにおける異議の事由
民事執行法35条,民事執行法83条1項
判旨
不動産引渡命令の発付を受けた買受人が当該不動産を第三者に譲渡した場合であっても、引渡命令の相手方は、当該買受人に対する請求異議の訴えにおいて、右譲渡の事実を異議の事由とすることはできない。
問題の所在(論点)
不動産引渡命令の発付後、買受人が目的不動産を第三者に譲渡した場合において、引渡命令の相手方は、買受人に対する請求異議の訴えにおいて右譲渡の事実を異議の事由として主張できるか(民事執行法35条1項、83条)。
規範
不動産引渡命令(民事執行法83条)に基づく強制執行の基礎となる執行力ある債務名義に関して、買受人が目的不動産を第三者に譲渡したという事由は、引渡命令の相手方が買受人(執行債権者)に対して提起する請求異議の事由(同法35条)には当たらない。
重要事実
本件は、競売による不動産の引渡命令の発付を受けた買受人(上告人)に対し、引渡命令の相手方が、買受人が当該不動産を第三者に譲渡したことを理由として、引渡命令に対する請求異議の訴えを提起した事案である。原審は、譲渡の事実をもって異議の事由とすることはできないと判断し、これに対し上告人が最高裁に上告した。
あてはめ
不動産引渡命令は、競売手続の買受人に対して迅速に不動産を引き渡させるための簡易な手続である。買受人が第三者に譲渡したとしても、引渡命令の効力自体が消滅するものではなく、相手方との関係で実体法上の引渡請求権が否定されるべき事情にはならない。したがって、引渡命令の執行債権者である買受人が所有権を喪失したという事由は、執行力自体の排除を求める請求異議の事由として許容されないと解される。
結論
不動産引渡命令の相手方は、買受人の不動産譲渡の事実を請求異議の事由とすることはできないため、請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
引渡命令という簡易・迅速な執行手続の安定性を重視する射程を有する。答案上は、執行債権者の適格性や実体的な権利の存否が争われる場面で、執行文付与に対する異議や請求異議の事由の限定解釈として引用可能である。ただし、承継執行文(民事執行法27条2項)の要否とは別の議論である点に注意を要する。
事件番号: 昭和39(オ)613 / 裁判年月日: 昭和40年4月2日 / 結論: 破棄自判
競売法第三二条第二項により準用される民訴法第六八七条によつて発せられた不動産引渡命令に対し、右命令の相手方よりその執行力の排除を求めるため請求異議の訴を提起することは許されない。