判旨
不動産引渡命令に対する不服申立ては、執行異議または即時抗告によるべきであり、第三者異議の訴えによってその執行の排除を求めることはできない。
問題の所在(論点)
不動産引渡命令による執行を阻止するために、民事執行法38条1項(旧民訴法549条)に基づく第三者異議の訴えを提起することができるか。
規範
不動産引渡命令(現行民事執行法83条1項参照)は、その性質が執行方法の一種である。したがって、同命令の相手方が、自己が正当な占有権原を有する等の理由で執行の排除を求める場合には、手続上の不服申立手段(執行異議または即時抗告)によるべきであり、実体法上の権利を争う第三者異議の訴え(同法38条1項参照)を提起することは許されない。
重要事実
債権者が不動産競売申立事件に基づき、被上告人らに対して不動産引渡命令を得た。これに対し、被上告人は、自身が当該不動産の所有者ではなく、かつ抵当権設定以前からの正当な賃借人であることを理由として、引渡命令に基づく執行の排除を求め、第三者異議の訴えを提起した。
あてはめ
本件不動産引渡命令は、競売法上の準用規定に基づき発せられた執行方法としての性質を有するものである。執行方法に対する不服は、審尋または口頭弁論の有無に応じ、即時抗告または執行異議という限定された不服申立手続によって解決されるべき事柄である。したがって、訴訟手続である第三者異議の訴えによって実体的な権利主張を行い、執行を排除しようとすることは、執行手続の構造上認められない。
結論
本件第三者異議の訴えは不適法であり、却下されるべきである。
実務上の射程
引渡命令という「執行処分」そのものの効力を争う場面において、第三者異議の訴えの適格を否定した。引渡命令に対する救済手段を限定することで、競売手続の迅速な完結を図る趣旨といえる。民事執行法上の救済手段(執行異議・即時抗告)と訴訟による救済の使い分けを判断する際の基準となる。
事件番号: 昭和35(オ)133 / 裁判年月日: 昭和38年11月28日 / 結論: 棄却
建物の占有移転禁止、執行吏保管等を命ずる仮処分に対し当該建物について占有権を有することを理由として第三者異議の訴を提起した者が仮処分債権者との間の別訴においてその建物を収去してその敷地を明け渡すべき旨の判決を受け、それが確定したときは、その者は、その建物に対する占有権を有するからといつて、同建物について民訴第五四九条第…
事件番号: 昭和45(オ)1072 / 裁判年月日: 昭和46年3月4日 / 結論: 棄却
競売法によつて準用される民訴法六八七条によつて発せられた不動産引渡命令は、債務名義ではなく執行方法にほかならず、右命令に対し第三者異議の訴を提起することは許されない。