建物の占有移転禁止、執行吏保管等を命ずる仮処分に対し当該建物について占有権を有することを理由として第三者異議の訴を提起した者が仮処分債権者との間の別訴においてその建物を収去してその敷地を明け渡すべき旨の判決を受け、それが確定したときは、その者は、その建物に対する占有権を有するからといつて、同建物について民訴第五四九条第一項にいう「引渡ヲ妨クル権利」を有するとはいえない。
占有権が民訴第五四九条第一項にいう「引渡ヲ妨クル権利」にあたらないとされた事例
民訴法549条1項
判旨
占有権に基づく第三者異議の訴えは、占有の有無のみを審理する占有の訴えではなく、口頭弁論終結時において執行債権者に対してその侵害を受忍すべき理由のない実体法上の権利の存否を判断すべきものである。建物収去敷地明渡しを命ずる確定判決を受けた者は、建物占有を否定され退去の義務を包含するため、占有権に基づき引渡しを妨げる権利を主張することはできない。
問題の所在(論点)
占有権が第三者異議の訴えにおける「引渡しを妨げる権利」に該当するか。また、建物収去義務を負う者が占有権を理由に執行の排除を求められるか。
規範
民事執行法38条1項(旧民訴法549条)にいう「目的物の引渡し…を妨げる権利」の存否は、口頭弁論終結当時の権利状態に基づいて判定すべきである。第三者が占有権を異議の理由とする場合、単に占有の侵害があるだけでなく、執行債権者に対してその侵害を受忍すべき理由のないことを要する。また、建物収去・敷地明渡しを命ずる判決は、その前提として当該建物の占有をも否定するものであり、建物からの退去義務をも包含すると解される。
重要事実
上告人Aは、本件建物に対する占有権を有すると主張して、仮処分の執行を排除するために第三者異議の訴えを提起した。しかし、Aは別途行われた本案訴訟において、建物収去敷地明渡しの確定判決を受けていた。上告人らは、占有権に基づく第三者異議の訴えは本権とは無関係に占有の存否のみを審理すべきであり、建物収去命令と退去義務は別個の観念であると主張した。
あてはめ
第三者異議の訴えは執行排除を目的とする訴訟法上の訴えであり、占有の訴えではない。本件においてAは建物に対する占有を有し得るとしても、既に本案訴訟において建物収去・敷地明渡しの確定判決を受けており、占有すべき権原を否定されている。敷地の占有という点では建物所有と建物占有は同様であり、収去を命ずる判決は退去を包含するため、Aは執行債権者(被上告人)に対して占有の侵害を受忍すべき地位にある。したがって、口頭弁論終結時においてAは「引渡しを妨げる権利」を有しない。
結論
占有権を有する者であっても、本案訴訟で建物収去敷地明渡しの確定判決を受けている場合は、もはや「引渡しを妨げる権利」を有するとはいえず、第三者異議の訴えは認められない。
実務上の射程
第三者異議の訴えにおける「権利」が、単なる形式的な占有権のみならず、債権者に対抗しうる実体法上の正当な権原を要することを明示した。特に建物収去命令に退去命令が包含されるという判断は、執行の実効性を確保する上で重要であり、実務上、不法占有者が占有権のみを盾に執行を妨害することを防ぐ根拠として機能する。
事件番号: 昭和39(オ)43 / 裁判年月日: 昭和39年11月20日 / 結論: その他
地上建物が自己の所有と主張し、かつ該土地に賃借権を有すると主張している場合は、土地の占有権をも主張しているものと解するのが相当である。