非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し,客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には,その発行価額は,特別の事情のない限り,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ2第2項にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たらない。
非上場会社が株主以外の者に発行した新株の発行価額が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ2第2項にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たらない場合
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ2第2項,会社法199条3項
判旨
非上場会社の新株発行において、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法により発行価額が決定されていたといえる場合には、特段の事情がない限り「特に有利な払込金額」には当たらない。
問題の所在(論点)
非上場会社の新株発行において、取締役会が採用した株価算定方法が「一応合理的な算定方法」といえる場合であっても、事後的な他手法による算定結果との乖離を理由に「特に有利な払込金額」に当たると判断すべきか。また、その判断枠組みは如何なるものか。
規範
非上場会社の株価算定手法は多岐にわたり、明確な判断基準が確立されていないため、事後的に他の手法で算定した結果と比較して判断するのは取締役の予測可能性を害し相当ではない。したがって、取締役会が新株発行当時、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額を決定していたといえる場合には、特別の事情のない限り、会社法201条1項(旧商法280条ノ2第2項)にいう「特に有利な払込金額(発行価額)」には当たらない。
重要事実
非上場会社である参加人は、経営難に陥り無配が続いていた。役員らは退職者から1株1500円で株式を買い取っており、新株引受権の行使価額も1500円に変更されていた。その後、参加人は公認会計士に株価算定を依頼し、同会計士は決算書等の客観的資料に基づき、配当還元法を用いて株価を1500円と算定した。取締役会はこの算定結果に基づき、1株1500円で新株発行を決議したが、株主総会で有利発行の理由説明を行わなかった。株主である被上告人は、DCF法等によれば株価は7000円以上であり有利発行にあたると主張して、取締役の損害賠償責任を追及した。
あてはめ
本件では、公認会計士が決算書等の客観的資料に基づき、従前の配当実績や取引事例を考慮して配当還元法を採用しており、この手法が本件において不適当とは一概にいえない。算定から決議まで約4か月経過しているが、株価を著しく変動させる事情もなかった。さらに、当時の実在する売買価格や新株引受権の行使価額も1500円で一致していた。これらの事実に照らせば、本件発行価額は一応合理的な算定方法によって決定されたといえ、これを覆すべき特段の事情も認められない。したがって、有利発行には該当しない。
結論
本件発行価額は「特に有利な払込金額」には当たらないため、有利発行の手続き(理由開示)を怠ったことによる損害賠償責任は認められない。
実務上の射程
非上場株式の価額決定に関する取締役の裁量を広く認めた判例である。答案上は、まず非上場株式の評価に一義的な基準がないことを指摘し、判例の「客観的資料に基づく一応合理的な算定方法」という規範を定立する。あてはめでは、専門家の鑑定の有無、資料の客観性、採用された評価手法の一般的な合理性、及び周辺の取引実例との整合性を検討する流れとなる。
事件番号: 平成22(受)1485 / 裁判年月日: 平成23年9月13日 / 結論: 破棄差戻
1 有価証券報告書等に虚偽の記載がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が,当該虚偽記載がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合において,当該虚偽記載の公表後に上記株式を取引所市場において処分したときは,上記投資者に生じた当該虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は,その取得価額と処分価額との差…