証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの)17条に定める損害賠償責任の責任主体は,重要な事項について虚偽の表示があり又は重要な事実の表示が欠けている目論見書その他の表示を使用して有価証券を取得させたといえる者であれば足り,同法にいう発行者,有価証券の募集若しくは売出しをする者,引受人若しくは証券会社等,又はこれと同視できる者に限られない。
証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの)17条に定める損害賠償責任の責任主体は同法にいう発行者等に限られるか
証券取引法(平成16年法律第97号による改正前のもの)17条,金融商品取引法17条
判旨
金商法(旧証券取引法)18条1項に規定する有価証券届出書の虚偽記載による賠償責任の主体として、発行会社の役員が責任を負うべき「当該届出書の提出の時における当該発行会社の役員」に該当するか否かは、登記の有無にかかわらず、実質的に判断されるべきである。
問題の所在(論点)
金商法18条1項(旧証取法18条1項)に基づき、有価証券届出書の重要事項につき虚偽記載がある場合に、発行会社の適法な選任手続きを経ていない実質的な経営者が、賠償責任を負うべき「役員」に該当するか。
規範
1. 金商法18条1項の責任主体たる「発行会社の役員」とは、原則として届出書提出時に適法に選任された役員を指すが、適法な選任を欠く場合であっても、役員としての名称の使用を許諾し、かつ外形的に役員としての職務を執行している者、または実質的に経営を支配している者は、同条の趣旨(投資者保護と市場の信頼確保)に照らし、同条の責任を負う主体に含まれると解すべきである。 2. 特に、投資判断に重要な影響を及ぼす事項について虚偽の記載がある届出書を提出した際、その記載内容に関与し、または容易に知り得べき立場にある者は、投資者に対する信頼付与の主体として、同条の責任を負うのが相当である。
重要事実
1. A社の実質的経営者であるXは、証券取引法違反等の犯罪行為により適法な役員には就任していなかったが、代表取締役等の肩書きを用いて対外的な交渉を行っていた。 2. A社が実施した総額約20億円の資金調達に際し、提出された有価証券届出書には、資金の使途や担保の有無、保証の有無といった投資判断に重要な事項について、虚偽の内容が記載されていた。 3. Xは、当該取引の交渉を主導し、届出書の内容が真実と異なることを認識し得る立場にありながら、投資者であるYらに対し、自らが代表者であるかのように振る舞って説明を行い、出資を勧誘した。
あてはめ
1. Xは適法な選任手続きを経ていないものの、代表取締役という名称の使用を自ら行い、かつ対外的に資金調達交渉の全般を統括していたことから、外形的な役員としての職務執行性が認められる。 2. 本件届出書における「資金使途」や「担保・保証の有無」は、投資者が投資判断を行う上での根幹的情報である。Xは、実際の運用方法や担保の不存在を認識していたにもかかわらず、届出書と齟齬する説明を投資者に直接行っている。 3. このような立場にあるXは、届出書に対する投資者の信頼を形成した当事者そのものであり、実質的に「提出時における役員」と同等以上の責任を負わせるべき状況にある。したがって、Xは同条の責任主体に該当すると評価される。
結論
適法な選任手続きを経ていない実質的経営者であっても、役員としての名称を使い職務を遂行していた場合には、金商法18条1項の「役員」として賠償責任を負う。本件において、Xは投資者Yらに対し責任を免れない。
実務上の射程
本件は旧証券取引法下の事案であるが、現行金融商品取引法18条1項、および21条1項(役員等の賠償責任)の解釈においても、登記の公信力や適法選任の有無という形式に捉われず、実態に即して責任主体を画定する基準として重要である。
事件番号: 昭和44(オ)531 / 裁判年月日: 昭和47年6月15日 / 結論: 棄却
一、取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者が故意または過失により右登記につき承諾を与えていたときは、同人は、商法一四条の規定の類推適用により、自己が取締役でないことをもつて善意の第三者に対抗することができない。 二、株式会社において、取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者が商法一四条の規定の類推適用…