共同相続された委託者指図型投資信託の受益権につき,相続開始後に元本償還金又は収益分配金が発生し,それが預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合,上記預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく,共同相続人の1人は,上記販売会社に対し,自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができない。
共同相続された委託者指図型投資信託の受益権につき,相続開始後に元本償還金又は収益分配金が発生し預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合に,共同相続人の1人が自己の相続分に相当する金員の支払を請求することの可否
民法427条,民法898条,民法899条,投資信託及び投資法人に関する法律6条3項
判旨
共同相続された委託者指図型投資信託の受益権から相続開始後に発生した元本償還金や収益分配金の返還債権は、当然に相続分に応じて分割されることはない。したがって、共同相続人の一人は販売会社に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を当然には請求できない。
問題の所在(論点)
共同相続された委託者指図型投資信託につき、相続開始後に発生し預り金となった元本償還金および収益分配金の返還債権は、可分債権として当然に各相続人の相続分に応じて分割されるか。
規範
共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は、相続開始と同時に当然に分割されることはない。また、当該受益権の内容を構成する元本償還金や収益分配金の交付を受ける権利も同様の性質を有するため、これらが販売会社の口座に預り金として入金されたとしても、その返還請求権は当然に分割されることはない。
重要事実
亡Aは投資信託の受益権(本件投信受益権)を有していたが、平成8年に死亡した。相続人は上告人を含む3名であり、法定相続分は各3分の1であった。相続開始後、本件投信受益権から収益分配金および元本償還金が発生し、販売会社の亡A名義口座に預り金として入金された。上告人は、販売会社に対し、当該預り金債権のうち自己の法定相続分(3分の1)に相当する金員の支払を求めて提訴した。
あてはめ
本件投信受益権は、相続開始により当然に分割される性質のものではない。本件の預り金債権は、この分割されない受益権の内容を構成する元本償還金や収益分配金に基づき発生したものである。したがって、受益権本体が不可分である以上、そこから派生して預り金形態となった債権も当然に分割されることはなく、遺産分割の対象となるべき性質を保持する。ゆえに、上告人は遺産分割を経ることなく自己の相続分を単独で請求することはできない。
結論
本件預り金債権は当然に分割されるものではないため、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
投資信託受益権およびそこから派生する金銭債権が遺産分割の対象となり、法定相続分に基づく当然分割(最高裁昭和29年判例の原則)が適用されないことを明示した。実務上、預貯金(最大決平成28年)と同様、投資信託に関連する債権も遺産分割協議・調停の枠組みで解決すべきであることを示す射程を持つ。
事件番号: 平成28(受)579 / 裁判年月日: 平成29年4月6日 / 結論: その他
共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。