相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない。
共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権の帰属と後にされた遺産分割の効力
民法88条2項,民法89条2項,民法427条,民法601条,民法896条,民法898条,民法899条,民法900条,民法907条,民法909条
判旨
相続開始から遺産分割までの間に、遺産である不動産から生じた賃料債権は、遺産とは別個の財産であり、各共同相続人が相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する。この賃料債権の帰属は、その後にされた遺産分割の遡及効(民法909条本文)の影響を受けない。
問題の所在(論点)
遺産である不動産から相続開始後・遺産分割確定前に発生した賃料債権の帰属、および当該債権の帰属に遺産分割の遡及効(民法909条本文)が及ぶか。
規範
遺産は相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するが、その間に遺産である賃貸不動産から生じる金銭債権(賃料債権)は遺産そのものではなく、別個の財産である。したがって、当該賃料債権は各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する。遺産分割の遡及効(民法909条本文)は、既に確定的に帰属した賃料債権には及ばないと解するのが相当である。
重要事実
被相続人甲の死亡により、妻(被上告人)および子(上告人ら)が本件各不動産を相続した。遺産分割の確定までの間、本件各不動産から生じる賃料等は、共同口座に管理されていた。その後、遺産分割が確定し、各不動産の取得者が決まったが、分割確定前に生じた賃料債権の帰属を巡って争いとなった。被上告人は「分割の遡及効により不動産取得者に帰属する」と主張し、上告人らは「法定相続分に応じて帰属する」と主張した。
あてはめ
本件における賃料債権は、相続開始から遺産分割決定までの間に発生したものであり、不動産という遺産から派生した法定果実ではあるが、遺産そのものとは別個の財産といえる。そのため、各相続人は自己の法定相続分に応じた分割単独債権としてこれを確定的に取得している。民法909条本文が遺産分割の効力を相続開始時に遡らせるとしても、それは遺産そのものの帰属を定めるものであり、既に各相続人に確定的に帰属した別個の財産である賃料債権の帰属を覆すものではない。よって、本件の賃料債権は不動産の取得確定に関わらず、法定相続分に基づき清算されるべきである。
結論
本件各不動産から生じた賃料債権は、遺産分割の帰属に関わらず、各相続人がその相続分に応じて取得する。したがって、相続分と異なる計算に基づき被上告人の請求を認めた原審の判断には法令の違反があり、破棄を免れない。
実務上の射程
本判決は、遺産から生じる「果実」が遺産そのものに含まれないことを明確にした。答案上では、遺産分割前に処分された遺産の代償金等と異なり、賃料債権は当然には遺産分割の対象とならない(別途合意がない限り、法定相続分で分かれる)ことを論じる際の根拠となる。実務上も、賃料の清算を遺産分割協議に含めるには、共同相続人全員の合意が必要となる点に注意を要する。
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