判旨
相続財産中に可分債権がある場合、その債権は法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する。
問題の所在(論点)
共同相続において、相続財産中に含まれる可分債権(金銭債権等)は、遺産分割を経ることなく法律上当然に分割され、各共同相続人に承継されるか。
規範
相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に法律上当然に分割される。そのため、各共同相続人は、その法定相続分に応じて個別に権利を承継し、行使することができる(民法896条、898条、899条)。
重要事実
共同相続が発生した際、相続財産の中に金銭債権などの可分な債権が含まれていた。この可分債権の帰属および行使方法をめぐり、共同相続人の一人が、当該債権が当然に分割されるのか、あるいは遺産分割の対象として共有(合有)状態に置かれるのかが争われた。
あてはめ
民法898条は相続財産を共同相続人の共有とするが、可分債権はその性質上、分割して承継させても他の相続人の利益を不当に害することはない。また、民法899条により各共同相続人は相続分に応じて権利義務を承継するとされている。したがって、本件においても、相続財産中の可分債権は相続開始とともに法律上当然に分割され、各相続人は自己の相続分に相当する額を個別に取得したといえる。
結論
可分債権は法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する。
実務上の射程
本判決は金銭債権などの可分債権が遺産分割の対象から外れるとする「当然分割説」を確立した。もっとも、実務上は預貯金債権について、最高裁大法廷平成28年12月19日決定により、遺産分割の対象に含まれる(当然分割されない)と変更された点に注意が必要である。現在、本判決の射程は、預貯金以外の一般的な可分債権に限定される。
事件番号: 平成1(オ)433 / 裁判年月日: 平成4年4月10日 / 結論: 棄却
相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。