共同相続人が全員の合意によつて遺産分割前の相続財産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権は、特別の事情のない限り、右相続財産に属さない分割債権であり、各共同相続人がその持分に応じて個々にこれを分割取得するものである。
共同相続人が全員の合意によつて遺産分割前の相続財産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権の性質
民法898条,民法899条,民法907条2項
判旨
共同相続人全員で遺産を売却した場合、その代金債権は、特段の事情がない限り相続財産に加わらず、各相続人が持分に応じて分割取得する個別の権利となる。
問題の所在(論点)
共同相続人が全員で遺産(不動産)を売却した場合、その売却代金債権は直ちに「相続財産」として遺産分割の対象となるか、それとも各相続人が当然に分割取得する固有の権利となるか。また、これに基づき受領代金の交付を求める請求に相続回復請求権の規定が適用されるか。
規範
共同相続人全員によって売却された相続財産は、遺産分割の対象から逸脱する。その売却代金は、一括して保管して遺産分割の対象に含める合意等の「特別の事情」がない限り、相続財産には加えられず、各共同相続人がその持分に応じて個々に分割取得すべきものである。
重要事実
亡Dの共同相続人である被上告人ら、上告人および他の相続人らは、相続した各土地を第三者に順次売却した。被上告人らは、上告人に売却代金の受領を委任した。上告人は代金を受領したが、被上告人らに対しその引渡しを拒んだ。これに対し被上告人らは、民法646条に基づき受任者の受取物引渡義務の履行を求めて提訴した。上告人側は、被上告人らの請求は相続回復請求権(民法884条)の行使にあたり、消滅時効が成立していると主張した。
あてはめ
本件各土地は共同相続人全員により売却されており、売却時点で被上告人らは共有持分権を適法に有し、売買にも関与していたため、相続権の侵害はない。また、一部の相続人は自ら代金を受領し、上告人に委任した者も一部は既に交付を受けている事実に照らせば、代金債権を一括して遺産分割の対象とするような「特別の事情」は認められない。したがって、代金債権は被上告人らが各持分に応じて個々に分割取得した固有の権利であり、相続財産には含まれない。ゆえに、本件請求は委任契約に基づく権利行使であって、相続回復請求権の行使には当たらない。
結論
売却代金は相続財産ではなく各相続人の固有の権利に属するため、受領代金の引渡請求に相続回復請求権の消滅時効(民法884条)が適用される余地はない。
実務上の射程
遺産分割前に共同相続人全員の合意で遺産を処分した場合の代金債権の帰属を示す。実務上、遺産分割の対象を確定させる際の基準となる。答案では、代金債権が「当然分割債権」として遺産分割の対象から外れる原則論として引用し、遺産分割協議に含めるには別途「特別の事情(合意)」が必要であると論じる際に用いる。
事件番号: 昭和28(オ)1442 / 裁判年月日: 昭和30年5月31日 / 結論: 棄却
原審認定の事実関係(原判定参照)は、民法第五六一条にいう「売主カ其売却シタル権利ヲ取得シテ之ヲ買主ニ移転スルコト能ハサルトキ」にあたるものと解して妨げない。
事件番号: 昭和31(オ)694 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の制限等により農地の自由な処分が禁止されている場合において、当該制限に抵触する態様で締結された売買契約は、当初から履行不能なものとして無効である。 第1 事案の概要:上告人らは、農地の売買契約の有効性を主張したが、当該農地は自作農創設特別措置法16条に基づき売渡しを受けたものであった。当時…