預託金会員制ゴルフクラブの会員がゴルフ場施設を利用した場合に発生すべき所定の施設利用料金の支払義務は、破産法五九条一項の未履行債務に当たらない。
預託金会員制ゴルフクラブの会員のゴルフ場施設利用料金支払義務と破産法五九条一項の未履行債務
破産法59条1項,民法第3編第2章契約
判旨
預託金会員制ゴルフクラブの会員が破産した場合、破産宣告時に会員側が施設利用料金等の未履行債務を負っていない限り、破産法59条1項(現行法53条1項)に基づく契約解除は認められない。
問題の所在(論点)
預託金会員制ゴルフクラブの会員契約について、破産した会員側に未履行の債務があるといえるか。特に、将来の施設利用時に発生する料金支払義務が、破産法53条1項(旧法59条1項)にいう「未履行債務」に該当するか。
規範
破産法53条1項(旧法59条1項)の双務契約における解除権が認められるためには、破産宣告当時、破産者及びその相手方の双方が共に履行を完了していないことが必要である。預託金会員制ゴルフクラブの会員契約において、会員の施設利用料金支払義務は、現実に施設を利用した際に初めて発生するものであり、将来の利用可能性に伴う抽象的な義務は、同条項にいう「未履行債務」には当たらない。
重要事実
ゴルフ場経営会社(上告人)と預託金会員制ゴルフクラブ契約を締結したEは、預託金650万円等を支払い会員資格を取得した。会員は施設を優先利用する権利を有し、利用時に料金を支払う義務を負うが、会費義務はない。その後Eが破産し、破産管財人(被上告人)が選任された。管財人は、本件契約が双務契約であり、将来の施設利用と料金支払が対価関係にあるとして、破産法に基づき契約を解除し、預託金の返還を請求した。
あてはめ
本件会員契約は、経営会社が施設を利用可能な状態に保持する義務を負う一方、会員は利用時に料金を支払う義務を負う双務契約である。しかし、利用料金支払義務は「現実に施設を利用しない限り発生しない」性質のものである。破産宣告時において、Eが既に施設を利用して未払いの料金があるといった事情がない限り、E側に具体的な未履行債務は存在しない。したがって、経営会社の義務が未履行であったとしても、双方未履行の状態にはない。
結論
会員側に未履行債務が認められない以上、破産管財人は破産法に基づき本件契約を解除することはできず、預託金の返還請求は認められない。
実務上の射程
継続的契約において、将来の個別の履行が条件付である場合、直ちに「双方未履行」とは評価されないことを示した。答案上は、破産法53条1項の要件検討において、債務の発生時期や確定性を慎重に検討する際の準拠となる。特に預託金返還請求権の発生時期(据置期間)を潜脱するような解除の可否を判断する場面で重要である。
事件番号: 平成8(オ)2224 / 裁判年月日: 平成12年2月29日 / 結論: 破棄自判
一 破産宣告当時双務契約の当事者双方に未履行の債務が存在していても、契約を解除することによって相手方に著しく不公平な状況が生じるような場合には、破産管財人は破産法五九条一項に基づく解除権を行使することができない。 二 年会費の定めのある預託金会員制ゴルフクラブの会員が破産した場合において、破産管財人が会員契約を解除する…
事件番号: 平成10(オ)71 / 裁判年月日: 平成11年11月30日 / 結論: 破棄差戻
ゴルフ場経営会社がゴルフクラブの会員募集用のために作成したパンフレットにはゴルフ場に高級ホテルが併設されることが強調されており、右ゴルフクラブの入会金及び預託金の額は右パンフレットに記載されたゴルフ場の特徴に相応して高額になっていたが、実際にゴルフ場経営会社によって提供された施設はその規模や構造等において右パンフレット…