預託金会員制のゴルフクラブの名称がゴルフ場の事業主体を表示するものとして用いられている場合において,会社分割に伴いゴルフ場の事業が他の会社又は設立会社に承継され,事業を承継した会社が上記名称を引き続き使用しているときには,上記会社が会社分割後遅滞なく当該ゴルフクラブの会員によるゴルフ場施設の優先的利用を拒否したなどの特段の事情がない限り,上記会社は,会社法22条1項の類推適用により,会員が分割をした会社に交付した預託金の返還義務を負う。
会社分割に伴いゴルフ場の事業を承継した会社が預託金会員制のゴルフクラブの名称を引き続き使用している場合における上記会社の預託金返還義務の有無
会社法22条1項,会社法757条,会社法762条1項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)373条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)374条の16
判旨
ゴルフ場の経営主体が交代し、譲受人が従前の商号を継続して使用する場合において、ゴルフ場会員の預託金返還請求権について、商法22条1項(旧商法26条1項)が類推適用され、譲受人は弁済の責任を負う。
問題の所在(論点)
ゴルフ場経営の事業譲渡において、商号(ゴルフ場名)を継続使用する譲受人は、商法22条1項の類推適用により、会員に対する預託金返還債務を負うか。また、譲受人が債務を負わない旨の通知を行っていた場合、「免責の登記」等に準ずるものとして責任を免れるか。
規範
商法22条1項の趣旨は、商号を継続使用する譲受人が債務を引き受けたと誤信して取引した第三者を保護する点にある。この趣旨は、事業譲渡においてゴルフ場会員が預託金返還義務も承継されたと信頼することについても妥当する。したがって、ゴルフ場経営主体の交代があり、譲受人が従来の名称を継続して使用する場合、免責の登記等の特段の事情がない限り、譲受人は会員の預託金返還債務について同条1項を類推適用して責任を負うべきである。
重要事実
A社が経営していたゴルフ場の経営権が、B社(被告)に譲渡された。B社は譲受後も従前の名称(ゴルフ場名)を継続して使用し、営業を行った。原告は、A社の時代に正会員として入会し、預託金(500万円)を預けていた。その後、原告は退会を申し入れ、B社に対して預託金の返還を求めた。B社は、事業譲渡に際して債務を引き受けていないこと、および会員に対して債務を負わない旨を記載した通知(本件書面)を送付していたと主張した。
あてはめ
まず、ゴルフ場名は商法上の商号そのものではないが、会員にとって経営主体を識別する重要な標識であり、その継続使用は経営主体及び債務承継の信頼を生じさせるため、同条1項が類推適用される。次に、B社が送付した「本件書面」について検討するに、その内容は多数の会員に周知されたとは認められず、また内容自体も法的な債務承継の有無を一般人が明確に理解できるものではなかった。加えて、一部の会員が不利益を甘受して再入会した事実があるからといって、原告のような全会員に対して債務不承継の周知(商法22条2項の通知に準ずるもの)があったとは評価できない。
結論
B社には商法22条1項が類推適用され、特段の免責事情も認められないため、原告の預託金返還請求に応じる義務がある。
実務上の射程
会社分割や事業譲渡に伴うゴルフ場の経営交代局面において、会員の既得権(預託金返還請求権)を保護するためのリーディングケースとして機能する。名称の継続使用がある限り、形式的な債務不承継合意は会員に対抗できない可能性が高い。
事件番号: 平成12(受)828 / 裁判年月日: 平成14年1月22日 / 結論: 破棄差戻
他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても,みだりに訴訟を誘発するなど国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずるおそれがなく,社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には,弁護士法73条に違反するものではない。
事件番号: 平成10(オ)1116 / 裁判年月日: 平成12年3月9日 / 結論: 破棄自判
預託金会員制ゴルフクラブの会員がゴルフ場施設を利用した場合に発生すべき所定の施設利用料金の支払義務は、破産法五九条一項の未履行債務に当たらない。
事件番号: 平成8(オ)2224 / 裁判年月日: 平成12年2月29日 / 結論: 破棄自判
一 破産宣告当時双務契約の当事者双方に未履行の債務が存在していても、契約を解除することによって相手方に著しく不公平な状況が生じるような場合には、破産管財人は破産法五九条一項に基づく解除権を行使することができない。 二 年会費の定めのある預託金会員制ゴルフクラブの会員が破産した場合において、破産管財人が会員契約を解除する…