他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても,みだりに訴訟を誘発するなど国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずるおそれがなく,社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には,弁護士法73条に違反するものではない。
他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為が弁護士法73条に違反するとはいえない場合
弁護士法73条
判旨
預託金会員制ゴルフ会員権の譲受人が退会手続を経て預託金返還請求権を譲り受けた場合、形式的に権利の譲受及び訴訟を業とする行為であっても、濫訴・紛議助長の恐れがなく社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められるときは弁護士法73条に違反しない。
問題の所在(論点)
他人の権利を譲り受けて訴訟により実行することを業とする行為が、弁護士法73条(譲受人の訴訟追行の禁止)に抵触し、私法上無効となるか。特に、ゴルフ会員権の売買を業とする者が預託金返還請求訴訟を繰り返す場合の判断枠組みが問題となる。
規範
弁護士法73条の趣旨は、非弁護士が権利の譲受けによりみだりに訴訟を誘発・紛議を助長し、または同法72条の禁止を潜脱して国民の法律生活上の利益を害することを防止する点にある。したがって、形式的に他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段で実行することを業とする行為であっても、上記の弊害が生ずるおそれがなく、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には、同条に違反しない。
重要事実
Dは、被上告人に対し、預託金900万円を支払いゴルフ会員権を取得した。Dは、据置期間経過後に会員権をF社に譲渡し、退会届等の書類一式を交付した。その後、会員権はG社を経て上告人に転売された。上告人は、Dに代わり退会届を提出して会員契約を終了させた上で、被上告人に対し預託金の返還を求めて提訴した。上告人はゴルフ会員権売買を業とする会社であり、利益目的で預託金額を下回る価格で会員権を譲り受け、返還請求訴訟を反復継続(東京地裁だけで4〜5件)していた。
あてはめ
1. 契約終了の成否:会則の譲渡制限は会員契約継続中の規定である。本件では、上告人がDの代理として退会届を提出したことで会員契約は終了し、これに伴い発生した預託金返還請求権が順次譲渡されたと解されるため、上告人は原則としてその権利行使が可能である。 2. 弁護士法73条の該否:ゴルフ会員権市場では多数の取引が公知の事実として行われている。上告人が「市場における通常の方法と価格」で購入し、「社会通念上相当な方法」で返還を求めたものであれば、利益目的であっても直ちに同条違反とはならない。単に提訴を反復している事実のみから即断せず、譲受けの態様、権利実行の方法、業務内容や実態を審理し、濫訴・紛議助長のおそれや72条潜脱の有無を個別具体的に検討すべきである。
結論
上告人の行為が社会的経済的に正当な業務の範囲内にあるか否かを審理させるため、原審に差し戻す。直ちに無効とはいえない。
実務上の射程
弁護士法73条の「業として」の解釈につき、形式的な該当性だけでなく、趣旨に照らした実質的な違法性(弊害の有無)を考慮する限定解釈を採った重要な判例である。答案上は、債権回収を目的とした債権譲渡の有効性が争われる場面で、本判例の「社会的経済的に正当な業務の範囲内」という判断枠組みを援用すべきである。
事件番号: 平成14(受)399 / 裁判年月日: 平成16年2月20日 / 結論: 破棄差戻
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