共同相続人間において定額郵便貯金債権が現に被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えには,上記債権の帰属に争いがある限り,確認の利益がある。 (補足意見がある。)
定額郵便貯金債権が遺産に属することの確認を求める訴えの確認の利益
民訴法134条,民法264条,民法427条,民法898条,民法899条,民法907条,郵便貯金法7条1項3号
判旨
定額郵便貯金債権は、相続開始と同時に当然に分割されることはなく、遺産分割の対象となるため、その帰属に争いがある限り、遺産に属することの確認を求める訴えには確認の利益が認められる。
問題の所在(論点)
定額郵便貯金債権は、相続開始によって当然に分割される可分債権に当たるか。また、同債権の遺産属否確認の訴えに確認の利益は認められるか。
規範
定額郵便貯金債権は、郵便貯金法の規定による分割払戻し制限の趣旨(事務処理の定型化・簡素化)や、共同して全額の払戻しを求めざるを得ないという性質に鑑みれば、預金者の死亡により相続分に応じて当然に分割されることはない。したがって、同債権の最終的な帰属は遺産分割手続により決せられるべきであり、その前提問題として遺産に属するか否かを決する民事訴訟上の確認の利益が認められる。
重要事実
被相続人Aが死亡し、その子である被上告人らと上告人らが相続人となった。相続財産の中には、郵便貯金法に基づく定額郵便貯金債権(本件債権)が含まれていた。上告人らが本件債権の遺産性を争ったため、被上告人らは本件債権がAの遺産に属することの確認を求めて提訴した。これに対し上告人側は、可分債権は相続開始と同時に当然分割されるため、確認の利益がないと主張して争った。
あてはめ
定額郵便貯金は、郵便貯金法により分割払戻しをしない条件で預け入れられる(同法7条1項3号)。この制限は、大量の事務を迅速・画一的に処理し、管理を簡素化する趣旨である。もし相続により当然分割されると解せば、個別の債権額計算が必要となり事務の簡素化に反する。また、分割を認めても結局は共同して払戻しを求めるほかないため、当然分割を認める実益はない。よって、本件債権は当然分割されず、遺産分割の対象として残るため、その前提となる遺産属否の確認には必要性が認められる。
結論
定額郵便貯金債権は当然分割されず、共同相続人間において遺産に属することの確認を求める訴えには確認の利益がある。
実務上の射程
金銭債権は当然分割されるという判例(最判昭29.4.8)の原則に対し、定額郵便貯金についてはその特殊な性質を理由に例外を認めた。その後、最大決平28.12.19が普通預金等も含め、預貯金一般について本判決と同様の論理で当然分割を否定し、遺産分割の対象に含める判断を示したため、現在の実務では預貯金全般について本判決の方向性が確立している。
事件番号: 平成5(オ)641 / 裁判年月日: 平成6年1月25日 / 結論: 破棄自判
固有必要的共同訴訟における共同被告の一部に対する訴えの取下げは、効力を生じない。
事件番号: 平成23(受)603 / 裁判年月日: 平成26年2月14日 / 結論: 破棄差戻
共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しない。