固有必要的共同訴訟における共同被告の一部に対する訴えの取下げは、効力を生じない。
固有必要的共同訴訟における共同被告の一部に対する訴えの取下げの効力
民訴法62条,民訴法236条
判旨
遺産確認の訴えのような固有必要的共同訴訟において、訴訟係属中に共同被告の一部に対してなされた訴えの取下げは、共同訴訟人全員が当事者として関与すべき訴訟の本質に反するため、無効である。
問題の所在(論点)
遺産確認の訴えのような固有必要的共同訴訟の係属中に、共同被告の一部に対してなされた訴えの取下げは有効か。取下げの効力を認めることが、合一確定を要する訴訟形態の要請と両立するかが問題となる。
規範
固有必要的共同訴訟においては、共同訴訟人全員について判決による紛争の解決が矛盾なくなされることが要請されるため、共同訴訟人全員が当事者として関与することが必要不可欠である。したがって、訴訟係属中に一部の被告に対してのみなされる訴えの取下げは、合一確定を目的とする当該訴訟の本質と相いれないため、その効力を生じない。
重要事実
亡Hの共同相続人である上告人及び選定当事者Dは、他の共同相続人である被上告人両名及びEら3名の計5名を被告として、特定の財産が遺産に属することの確認を求める訴えを提起した。しかし、第一審の係属中に、上告人らは被告のうちEら3名に対する訴えを取り下げる旨の書面を提出した。第一審及び原審は、この取下げを有効と判断した上で、被告が一部欠けた(共同相続人全員を被告としていない)ことを理由に、本件訴えを不適法として却下した。
事件番号: 平成23(受)603 / 裁判年月日: 平成26年2月14日 / 結論: 破棄差戻
共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しない。
あてはめ
本件の遺産確認の訴えは、共同相続人間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟である。本件では、上告人らが当初共同相続人全員を当事者として適法に訴えを提起したにもかかわらず、途中で被告の一部(Eら3名)を除外する取下げを行っている。しかし、固有必要的共同訴訟において一部の被告を離脱させることは、共同訴訟人全員の関与を欠くことになり、紛争の矛盾のない解決という訴訟の本質に反する。したがって、当該取下げは法律上無効であり、Eら3名も依然として被告の地位に留まっていると解すべきである。
結論
固有必要的共同訴訟における一部の被告に対する訴えの取下げは無効である。本件の取下げは効力を生じず、全員が当事者として残っているため、訴えを不適法とした原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
固有必要的共同訴訟における「訴えの取下げ」だけでなく「請求の放棄・認諾」についても、全員で行わなければならないとする解釈の根拠となる。答案上では、必要的共同訴訟の要件(民訴法40条)を確認した上で、手続の安定や合一確定の要請から、一部の当事者のみによる離脱行為を否定する文脈で使用する。
事件番号: 昭和60(オ)727 / 裁判年月日: 平成元年3月28日 / 結論: 棄却
共同相続人間における遺産確認の訴えは、固有必要的共同訴訟と解すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)535 / 裁判年月日: 昭和46年10月7日 / 結論: 棄却
一、一個の物を共有する数名の者全員が、共同原告となり、共有権(その数名が共同して有する一個の所有権)に基づき共有権の確認を求めているときは、その訴訟の形態は、固有必要的共同訴訟と解すべきである。 二、一個の不動産を共有する数名の者全員が、共同原告となり、共有権(その数名が共同して有する一個の所有権)に基づき所有権移転登…
事件番号: 平成5(オ)920 / 裁判年月日: 平成9年3月14日 / 結論: 棄却
共同相続人甲、乙、丙のうち甲と乙との間において、ある土地につき甲の所有権確認請求を棄却する旨の判決が確定し、右確定判決の既判力により、甲が乙に対して相続による右土地の共有持分の取得を主張し得なくなった場合であっても、甲は右土地につき遺産確認の訴えを提起することができる。