共同相続人甲、乙、丙のうち甲と乙との間において、ある土地につき甲の所有権確認請求を棄却する旨の判決が確定し、右確定判決の既判力により、甲が乙に対して相続による右土地の共有持分の取得を主張し得なくなった場合であっても、甲は右土地につき遺産確認の訴えを提起することができる。
共同相続人の一部の間において土地所有権確認請求を棄却する判決が確定した場合に敗訴原告が右土地につき遺産確認の訴えを提起することの可否
民訴法45条,民訴法199条,民訴法225条,民法898条
判旨
共同相続人間である土地の所有権確認請求を棄却する判決が確定し、相続による持分取得を主張できなくなった後でも、当該土地の遺産確認の訴えを提起することは許される。
問題の所在(論点)
特定の共同相続人間で所有権確認請求を棄却する判決が確定した場合に、敗訴した相続人が再度、当該財産について遺産確認の訴えを提起することは、既判力に抵触するか、あるいは確認の利益(原告適格)を欠くとして許されないか。
規範
遺産確認の訴えは、特定の財産が被相続人の遺産に属することを共同相続人全員の間で合一に確定するための訴えである。特定の共同相続人間でなされた所有権確認訴訟の既判力は、当該当事者間での所有権の存否を確定するにとどまり、原告の相続人たる地位や当該財産の遺産帰属性までを否定するものではない。したがって、既判力の抵触が生じない限り、遺産確認の訴えを提起する原告適格および確認の利益は失われない。
重要事実
共同相続人甲、乙、丙のうち、甲と乙との間で特定の土地について甲の所有権確認請求を棄却する判決が確定した。この確定判決の既判力により、甲は乙に対して相続を原因とする当該土地の共有持分権の取得を主張できなくなった。その後、甲はあらためて当該土地が遺産に属することの確認を求める「遺産確認の訴え」を提起した。
事件番号: 平成5(オ)921 / 裁判年月日: 平成9年3月14日 / 結論: 棄却
丙の共同相続人である甲乙間の土地の所有権確認請求訴訟において、甲の請求を棄却する旨の判決が確定した場合には、甲、乙がそれぞれ右土地の所有権を単独で取得したと主張して争っており、甲が事実審口頭弁論終結前に生じていた丙の死亡による相続の事実を主張しなかったこと、右判決が双方の主張を排斥して右土地が丙の所有である旨判断したこ…
あてはめ
前訴の確定判決は、あくまで甲乙間において甲の所有権が否定されたという判断に既判力が生じるにすぎない。これは、甲が相続人であることや、本件土地が被相続人の遺産を構成していたという事実自体を否定するものではない。遺産確認の訴えは、相続人全員(甲乙丙)の間で遺産の範囲を合一に確定させる実効的な手段であり、前訴で敗訴した甲であっても、他の相続人を含めた全体的な解決のために遺産帰属性を争う利益は依然として存続しているといえる。
結論
甲は遺産確認の訴えの原告適格を失わず、当該訴えを提起することができる。
実務上の射程
所有権確認訴訟(特定の当事者間の権利関係の存否)と遺産確認訴訟(遺産の範囲の合一的確定)の訴訟物の違いを明確に示した判例。答案上では、前訴の既判力が後訴を遮断するかを論じる際、訴訟物レベルでの「同一性・矛盾・先決関係」の有無を検討する根拠として活用する。特に遺産分割の前提問題としての確認の利益を肯定する論理として重要である。
事件番号: 昭和59(オ)199 / 裁判年月日: 平成元年9月19日 / 結論: その他
一 戦後アメリカ合衆国軍隊に接収され今日まで軍用地として使用されている土地につき、登記簿上の所有名義人が同国政府のために締結された賃貸借契約に基づき継続して軍用地料を受領し、公租公課も負担してきたなど原判示の事実関係の下においては、右所有名義人の時効取得を認めることができる。 二 選択的併合の関係にある一の請求を認容し…
事件番号: 平成21(受)1097 / 裁判年月日: 平成22年12月16日 / 結論: その他
不動産の所有権が,元の所有者から中間者に,次いで中間者から現在の所有者に,順次移転したにもかかわらず,登記名義がなお元の所有者の下に残っている場合において,現在の所有者が元の所有者に対し,元の所有者から現在の所有者に対する真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を請求することは許されない。
事件番号: 昭和40(オ)1066 / 裁判年月日: 昭和41年10月7日 / 結論: 棄却
書面によらない農地の贈与契約は、農地法第三条第一項による知事の許可を受けるまでは、右農地の引渡があつた後でも、取り消すことができる。