丙の共同相続人である甲乙間の土地の所有権確認請求訴訟において、甲の請求を棄却する旨の判決が確定した場合には、甲、乙がそれぞれ右土地の所有権を単独で取得したと主張して争っており、甲が事実審口頭弁論終結前に生じていた丙の死亡による相続の事実を主張しなかったこと、右判決が双方の主張を排斥して右土地が丙の所有である旨判断したこと、右判決の確定後に乙が右土地の所有権を主張したために甲が後訴を提起するに至ったことなどの事情があるとしても、甲が後訴において相続による右土地の共有持分の取得を主張することは、前訴の確定判決の既判力に抵触して許されない。 (補足意見及び反対意見がある。)
所有権確認請求訴訟で敗訴した原告が後訴において共有持分の取得を主張することが前訴の確定判決の既判力に抵触して許されないとされた事例
民訴法199条,民法898条
判旨
所有権確認訴訟で請求棄却判決が確定した場合、原告が事実審口頭弁論終結時までに生じた相続による共有持分取得を後の訴訟で主張することは、前訴判決の既判力に抵触し許されない。
問題の所在(論点)
前訴において特定の土地につき自己の単独所有権を主張して敗訴した者が、後訴において、前訴の事実審口頭弁論終結時以前に生じていた相続を理由に共有持分の取得を主張することが、前訴判決の既判力(民訴法114条1項)に抵触するか。
規範
所有権確認請求訴訟において請求棄却の判決が確定したときは、原告が同訴訟の事実審口頭弁論終結の時点において目的物の所有権を有していない旨の判断につき既判力が生じる。したがって、原告が右時点以前に生じた所有権の一部たる共有持分の取得原因事実を後の訴訟において主張することは、特段の事情がない限り、右確定判決の既判力に抵触する。
重要事実
亡Dの相続人である上告人は、被上告人に対し、本件土地につき売買又は時効取得を理由とする所有権確認等を求める前訴を提起したが、請求棄却判決が確定した。前訴ではDが土地を買い受けた事実は認められたが、上告人への所有権移転や被上告人への贈与は否定されていた。前訴確定後、被上告人が土地の遺産性を争ったため、上告人はDからの相続を理由に共有持分権の確認等を求める本訴を提起した。
事件番号: 平成5(オ)920 / 裁判年月日: 平成9年3月14日 / 結論: 棄却
共同相続人甲、乙、丙のうち甲と乙との間において、ある土地につき甲の所有権確認請求を棄却する旨の判決が確定し、右確定判決の既判力により、甲が乙に対して相続による右土地の共有持分の取得を主張し得なくなった場合であっても、甲は右土地につき遺産確認の訴えを提起することができる。
あてはめ
前訴の訴訟物は土地の所有権の存否であり、相続による共有持分権は、その性質上、単独所有権の一部を構成するものであるから、両者は実質的に同一の権利関係を目的とする。上告人が本訴で主張する相続の事実は、前訴の口頭弁論終結前に既に発生していたものであり、前訴において予備的に主張することが可能であった。前訴判決が理由中で土地をDの所有と認定していたとしても、主文における上告人の所有権否定の判断を覆すことはできず、被上告人が判決後に遺産性を争ったという事情があっても、既判力の遮断効を免れる例外的な事情には当たらない。
結論
上告人が相続による共有持分の取得を主張することは、前訴判決の既判力に抵触するため許されない。
実務上の射程
所有権と共有持分権の訴訟物同一性を認め、標準時前の原因事実に基づく後訴を既判力により厳格に遮断した。相続事案であっても予備的主張を怠ったことの不利益を当事者に課す実務指針となる。
事件番号: 平成21(受)1097 / 裁判年月日: 平成22年12月16日 / 結論: その他
不動産の所有権が,元の所有者から中間者に,次いで中間者から現在の所有者に,順次移転したにもかかわらず,登記名義がなお元の所有者の下に残っている場合において,現在の所有者が元の所有者に対し,元の所有者から現在の所有者に対する真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を請求することは許されない。
事件番号: 昭和40(オ)1066 / 裁判年月日: 昭和41年10月7日 / 結論: 棄却
書面によらない農地の贈与契約は、農地法第三条第一項による知事の許可を受けるまでは、右農地の引渡があつた後でも、取り消すことができる。
事件番号: 昭和61(オ)1304 / 裁判年月日: 平成3年6月18日 / 結論: その他
上告理由書記載の上告理由の一部を撤回する旨の書面が裁判所に到達した後に、これと同旨の理由に基づいて提起された附帯上告は、その提起が上告理由書提出期限後であるときは、不適法である。
事件番号: 平成23(受)603 / 裁判年月日: 平成26年2月14日 / 結論: 破棄差戻
共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しない。