書面によらない農地の贈与契約は、農地法第三条第一項による知事の許可を受けるまでは、右農地の引渡があつた後でも、取り消すことができる。
書面によらない農地の贈与契約と右農地の引渡後における取消の許否
民法550条,農地法3条1項
判旨
農地法の許可を停止条件とする書面によらない農地の贈与において、たとえ農地の引渡しが完了していても、条件が成就していない以上は、民法550条但書の「履行が終わった」には当たらず、贈与を解除できる。
問題の所在(論点)
農地法上の許可を停止条件とする書面によらない農地の贈与において、許可(条件成就)前に農地の引渡しが行われた場合、民法550条但書の「履行が終わった」に該当し、撤回ができなくなるか。
規範
民法550条但書の趣旨は、書面によらない贈与契約であっても、既に効力が生じ、かつ履行が終了した場合には撤回を許さない点にある。したがって、停止条件付贈与契約において、条件が成就する前に目的物の引渡しがなされたとしても、契約の効力が発生していない以上、同条但書の「履行が終わった」には当たらない。
重要事実
贈与者Dは、受贈者Aに対し、農地法3条1項に基づく知事の許可を停止条件として、口頭(書面によらない形)で農地を贈与し、現実に引渡しを行った。しかし、知事の許可申請手続は行われないままDが死亡し、その相続人である被上告人が贈与の撤回を主張した。
事件番号: 昭和44(オ)1270 / 裁判年月日: 昭和46年11月30日 / 結論: 棄却
相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによつて占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであつたときでも、相続人は民法一八五条にいう「新権原」により所有の意思をもつて占有を始めたものというべきで…
あてはめ
本件贈与契約は知事の許可を停止条件とするものであるところ、現実の引渡しはあったものの、いまだ許可申請すらなされておらず、停止条件は成就していない。条件が成就していない以上、贈与契約の効力そのものが確定的に発生しておらず、いまだ「履行が終わった」とはいえない。したがって、贈与者の相続人による撤回は認められるべきである。
結論
停止条件が成就していない以上、たとえ引渡し済みであっても、贈与者は民法550条に基づき書面によらない贈与を撤回することができる。
実務上の射程
農地のように許可が効力発生要件となる事案において、民法550条但書の「履行」が単なる事実上の給付だけでなく、法律上の効力発生を前提としていることを示した。司法試験においては、書面によらない贈与の撤回の可否が問われた際、履行の有無を判断する前提として「条件の成否」や「物権変動の効力発生」と関連付けて論じる際の指針となる。
事件番号: 昭和43(オ)1167 / 裁判年月日: 昭和44年9月11日 / 結論: 棄却
譲渡令による強制譲渡手続が譲渡令書の未交付の状態において譲渡令が廃止され、農地法が施行された場合は、該強制譲渡の手続を受け継ぐ手続は、農地法施行法一三条による農地法一五条およびこれに関連する法令による手続である。
事件番号: 昭和35(オ)1076 / 裁判年月日: 昭和36年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法5条1項に基づき知事が与えた農地転用許可は、土地の客観的性質を変更させるものであり、申請人以外の第三者に対しても、当該土地を宅地として取り扱うべき効力を生ずる。 第1 事案の概要:上告人と訴外Dは、本件土地(田・畑)を宅地に転用することについて、農地法5条1項に基づき知事から共同で転用許可を…