一 行政事件訴訟法第四五条・第三九条による通知の懈怠は、当該訴訟手続の効力に影響しない。 二 農地の所有権移転についての知事の許可の制度は、その買受人の適格性を審査してその許否を決することを趣旨とするものである。
一 行政事件訴訟法第四五条・第三九条による通知の懈怠と当該訴訟手続の効力 二 農地の所有権移転についての知事の許可の性質
行政事件訴訟法45条,行政事件訴訟法39条,農地調整法4条
判旨
農地法上の所有権移転許可制度の趣旨は買受人の適格性審査にあるため、申請上の売主名義が登記簿上の前所有者であっても、実質的な売主との間の売買契約に対する許可としての効力を有する。
問題の所在(論点)
農地法に基づく所有権移転許可において、申請上の売主名義が登記簿上の前所有者(父)であり実質的な売主(子)と異なる場合、当該許可は実質的な売買契約に対する許可として有効か。
規範
農地法に基づく所有権移転の許可制度は、その買受人の適格性を審査してその許否を決することを趣旨とするものである。したがって、実質的な権利関係と申請上の名義が異なる場合であっても、買受人の適格性審査という制度趣旨を満たす限り、当該許可の効力は実質的な契約に対して及ぶ。
重要事実
上告人は、農地売買契約の売主であった。当該農地の売買にあたり、都道府県知事に対して許可申請がなされたが、その際の売主名義は上告人ではなく、登記簿上の名義人である上告人の父(D)とされていた。知事は、Dを売主とする申請に対して許可を与えた。その後、上告人を売主とする本件売買契約における許可の効力が争点となった。
事件番号: 昭和27(オ)653 / 裁判年月日: 昭和30年9月9日 / 結論: 棄却
一 農地の贈与についての知事の許可は、贈与の成立前になされることを要せず、許可のあつたときから右贈与は効力を生ずるものであり、許可当時贈与者が既に死亡していても、その効力の発生を妨げない。 二 受贈者に対する土地所有権移転登記が、死亡している贈与者名義でなされた場合であつても、右登記が死亡者およびその相続人の意志に反し…
あてはめ
農地法の許可制度の本質は、買受人が農地を適切に効率利用できるかという「買受人の適格性」を公的に審査することにある。本件では、許可申請において売主名義が登記簿上の名義人である父Dとされていたが、これは登記手続上の便宜等によるものと解される。審査の主眼である買受人の適格性については、知事によって既に判断が示されている。そうであれば、名義人が異なっていたとしても、実質的な売主である上告人と買受人との間の売買契約に対する許可としての効力を認めることができる。
結論
本件許可は、上告人を売主とする農地売買契約の許可としての効力を有する。したがって、当該売買契約に基づく所有権移転は有効である。
実務上の射程
農地法3条の許可の性格を「買受人の適格性審査」に求める基本的な判断枠組み。実務上、許可申請時の売主名義が真実の権利者と異なる場合(相続未登記の場合等)でも、買受人の審査が完了していれば許可の効力を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)1076 / 裁判年月日: 昭和36年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法5条1項に基づき知事が与えた農地転用許可は、土地の客観的性質を変更させるものであり、申請人以外の第三者に対しても、当該土地を宅地として取り扱うべき効力を生ずる。 第1 事案の概要:上告人と訴外Dは、本件土地(田・畑)を宅地に転用することについて、農地法5条1項に基づき知事から共同で転用許可を…
事件番号: 昭和40(オ)656 / 裁判年月日: 昭和41年11月10日 / 結論: 棄却
一審判決の送達が不適法であつても、控訴審において異議なく訴訟を遂行してきた以上、適法な上告理由とならない。
事件番号: 昭和24(オ)326 / 裁判年月日: 昭和25年9月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他主占有から自主占有への転換が認められるためには、権原の性質上所有の意思がないものと認定される占有において、客観的にみて所有の意思があるものと解される事情が必要である。 第1 事案の概要:被上告人の先代Dは、本件不動産を「家産」として所有し、その散逸を防止するために上告人A1夫婦に管理させていた。…
事件番号: 昭和41(オ)1097 / 裁判年月日: 昭和42年6月6日 / 結論: 棄却
不動産の所有権が順次甲、乙、丙と譲渡された場合に、甲が乙に対し所有権移転登記をする意思で、登記申請書類を交付していたときは、甲の右登記申請意思は、丙が右書類を利用して甲から丙に直接所有権移転登記をすることを無効たらしめるものではない。