譲渡令による強制譲渡手続が譲渡令書の未交付の状態において譲渡令が廃止され、農地法が施行された場合は、該強制譲渡の手続を受け継ぐ手続は、農地法施行法一三条による農地法一五条およびこれに関連する法令による手続である。
自作農創設特別措置法及び農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令(以下「譲渡令」という。)による強制譲渡手続が譲渡令書の未交付の状態において譲渡令が廃止された場合とこれを受け継ぐ手続
農地法施行法13条
判旨
農地の売買において、所定の行政上の手続(譲渡令に基づく認可や農地法上の手続)が完了せず、譲渡令書の交付がないまま農地法が施行された場合、売買契約に基づく所有権の取得は認められない。
問題の所在(論点)
農地の譲渡において、旧法(譲渡令)に基づく手続が完了せず、かつ新法(農地法)に基づく手続も履践されていない場合、売買契約のみをもって所有権の取得を認めることができるか。
規範
農地等の譲渡に関しては、自作農創設特別措置法や農地調整法(及びその譲渡令)、その後の農地法等による規制を受ける。これらの法令に基づく行政上の承認・認可・譲渡令書の交付等の手続が完了しない限り、譲渡契約に基づく所有権移転の効力は発生しない。また、旧法下の手続が未完のまま新法(農地法)が施行された場合、新法所定の手続(施行法に基づく受継ぎ等)が適法に履践されない限り、権利取得は認められない。
重要事実
上告人Aは、亡Eから本件田及び溜池を買い受ける契約を締結した。AとEは、当時の譲渡令に基づき農業委員会へ譲渡の届出を行い、委員会は承認を可決し強制譲渡計画を定め、大阪府知事へ認可申請書を作成した。しかし、その後の手続が怠られ、譲渡令書が交付されないまま農地法が施行された。Aはこれらの手続経過を根拠に、所有権の取得を主張した。
事件番号: 昭和44(オ)498 / 裁判年月日: 昭和44年10月31日 / 結論: 棄却
現況が農地である土地を目的とする売買契約締結後に、右土地を含む周辺一帯が都市計画区域に指定され、順次宅地として分譲されるなど客観的事情が変化し、かつ、買主がこれに地盛りをして売主の承諾のもとに建物を建築するなどしたために、右土地が完全に宅地に変じた場合には、右売買契約は、知事の許可なしに効力を生ずるものと解すべきである…
あてはめ
本件では、譲渡令に基づく手続として、農業委員会による認可申請までは行われたものの、最終的な譲渡令書の交付という重要な手続が未了のまま農地法が施行されている。農地法施行後は、施行法13条等を介して農地法上の手続(15条等)を受継ぐ必要があるが、本件の事実関係においてそれらの規定に基づく手続が適法に履践されたとは認められない。したがって、行政上の規制を潜脱して所有権が移転したと解することはできない。
結論
本件田及び溜池について、上告人Aが所有権を取得したものとは認められない。
実務上の射程
農地等の公法上の規制がある財産の取引において、行政庁の許可・認可が効力発生要件(停止条件)となっている場合、手続が途絶した状態での私法上の権利主張は認められないことを示す。答案上は、農地法3条許可等の不備が契約の効力に及ぼす影響を論じる際の参照判例となる。
事件番号: 昭和33(オ)322 / 裁判年月日: 昭和36年7月14日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地法3条の許可を停止条件とする農地の売買契約において、知事による不許可の決定がなされたときは、特段の事情がない限り、売買はその効力を生ぜず確定的に不能となる。 第1 事案の概要:被上告人(買主)は上告人(売主)から、知事の許可を条件として本件農地を代金40万円で買い受け、代金を完済した。その際、…
事件番号: 昭和41(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: 棄却
不動産の譲受人を債権者とし譲渡人を債務者として右不動産について処分禁止の仮処分登記が経由され、その後第三者に対する所有権移転登記が経由された場合において、仮処分債権者たる譲受人より譲渡人に対する本案訴訟としての所有権移転登記手続請求の訴と右第三者に対する所有権取得登記の抹消登記手続請求の訴とが併合して審理され、仮処分債…
事件番号: 昭和57(オ)452 / 裁判年月日: 昭和58年7月5日 / 結論: 棄却
不動産の売買の遡及的合意解除がされた場合、買主から右不動産を取得したが対抗要件としての登記を経由していない者は、たとえ仮登記を経由したとしても、民法五四五条一項但書にいう「第三者」として保護されない。
事件番号: 昭和42(オ)427 / 裁判年月日: 昭和42年12月19日 / 結論: 棄却
仮登記原因の疎明の有無は、仮登記仮処分命令の効力に消長をきたすものではない。