仮登記原因の疎明の有無は、仮登記仮処分命令の効力に消長をきたすものではない。
仮登記原因の疎明の充足の有無と当該仮登記仮処分命令の効力
不動産登記法33条
判旨
仮登記仮処分命令に不服がある者は、本案の訴えを提起して仮登記の基本となる権利の有無の判断を受けた上で、当該命令の取消しを求めるべきである。したがって、仮登記原因の疎明の充足の有無といった事情は、仮登記仮処分命令の効力に影響を及ぼすものではない。
問題の所在(論点)
仮登記仮処分命令に対する不服がある場合、どのような手続によってその効力を争うべきか。また、仮登記原因の疎明の充足性に疑義があることは、当該命令の効力を失わせる事由となるか。
規範
仮登記仮処分命令に対する不服申立てについては、手続上の疎明の是非を争うのではなく、実体法上の権利の存否を本案の訴えにおいて確定させるべきである。具体的には、本案の訴えにより権利の有無の判断を受けた上で、その結果に基づいて当該命令の取消しを求めるのが相当である。仮登記原因の疎明の充足性は、命令の効力を左右する事由とはならない。
重要事実
上告人は、仮登記仮処分命令の基礎となった疎明資料(公正証書)について、債権者の代理人が本人として出頭して作成嘱託手続がなされた点に違法があると主張した。しかし、上告人(債務者)自身も同手続に出頭し、右事情を知悉した上で作成を嘱託していたという事実が原判決によって確定されていた。
事件番号: 昭和41(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: 棄却
不動産の譲受人を債権者とし譲渡人を債務者として右不動産について処分禁止の仮処分登記が経由され、その後第三者に対する所有権移転登記が経由された場合において、仮処分債権者たる譲受人より譲渡人に対する本案訴訟としての所有権移転登記手続請求の訴と右第三者に対する所有権取得登記の抹消登記手続請求の訴とが併合して審理され、仮処分債…
あてはめ
本件では、上告人が公正証書の作成手続に違法があると主張するが、これは疎明の充足性を争うものにすぎない。加えて、上告人自身が手続の状況を認識した上で作成を嘱託しているという事実に照らせば、裁判所が当該公正証書を疎明資料として仮登記仮処分命令を発したことに違法はない。疎明の成否という手続的事項は、本案における権利の存否とは別個の問題であり、命令の効力を直ちに否定する理由にはならない。
結論
仮登記仮処分命令は有効であり、疎明の不備を理由とする不服申し立ては認められない。不服がある場合は本案の訴えによるべきである。
実務上の射程
仮登記仮処分(不動産登記法108条)に対する不服申立ての構造を示す判例である。実務上、保全処分の疎明の不備を独立の取消事由として争うことは困難であり、権利の存否という実体的事由に基づき、本案訴訟を通じて解決を図るべきとする規範として機能する。
事件番号: 昭和52(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和54年2月22日 / 結論: 棄却
仮登記担保関係において、債権者が履行遅滞を理由に代物弁済予約の完結の意思表示をし、目的不動産につき予め交付を受けていた登記に必要な書類を利用して仮登記に基づく所有権移転登記を経由した場合でも、清算義務を負うときは、債務者は、清算金の提供を受けるまでは債務を弁済して目的不動産を取り戻すことができる。
事件番号: 昭和32(オ)1129 / 裁判年月日: 昭和35年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の処分防止という主観的な意図があったとしても、登記原因となる合意という実体関係が欠如する以上、抵当権設定登記等は無効である。また、単純・無条件の贈与に基づき所有権保存登記がなされた場合は「履行の終わった」贈与に当たり、もはや撤回できない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人に対し本件不動産…
事件番号: 昭和57(オ)452 / 裁判年月日: 昭和58年7月5日 / 結論: 棄却
不動産の売買の遡及的合意解除がされた場合、買主から右不動産を取得したが対抗要件としての登記を経由していない者は、たとえ仮登記を経由したとしても、民法五四五条一項但書にいう「第三者」として保護されない。
事件番号: 昭和43(オ)1167 / 裁判年月日: 昭和44年9月11日 / 結論: 棄却
譲渡令による強制譲渡手続が譲渡令書の未交付の状態において譲渡令が廃止され、農地法が施行された場合は、該強制譲渡の手続を受け継ぐ手続は、農地法施行法一三条による農地法一五条およびこれに関連する法令による手続である。