不動産の譲受人を債権者とし譲渡人を債務者として右不動産について処分禁止の仮処分登記が経由され、その後第三者に対する所有権移転登記が経由された場合において、仮処分債権者たる譲受人より譲渡人に対する本案訴訟としての所有権移転登記手続請求の訴と右第三者に対する所有権取得登記の抹消登記手続請求の訴とが併合して審理され、仮処分債権者の譲渡人に対する請求が認容されるときは、仮処分債権者の第三者に対する右所有権取得登記の抹消登記手続請求を認容することができる。
仮処分債権者が仮処分登記後にされた登記の抹消登記手続を請求することができるとされた事例
民法177条,民訴法755条,不動産登記法4章5節
判旨
不動産処分禁止仮処分登記後に、債務者から所有権を取得し登記を経た第三者は、仮処分の効力により、仮処分債権者が本案訴訟で勝訴した場合には債権者に対して所有権取得を対抗できない。
問題の所在(論点)
不動産の処分禁止仮処分登記がなされた後、債務者から当該不動産を譲り受け登記を完了した第三者に対し、仮処分債権者は自己の登記(対抗要件)を具備する前であっても、仮処分の効力に基づき所有権の主張および登記抹消請求ができるか(民事保全法等の手続的効果と民法177条の対抗関係)。
規範
不動産の処分禁止仮処分命令に基づき、その旨の登記がなされた場合、仮処分債権者は、後の本案訴訟において自己の所有権が認められたときは、仮処分登記後に登記を得た第三者に対し、対抗要件としての所有権移転登記を未だ備えていなくても、仮処分の効力によって自己の所有権を主張し、当該第三者の登記の抹消を請求することができる。
重要事実
被上告人(買主)は、D(売主)から本件土地を買い受けたが、Dが他へ売却する恐れがあったため、Dを債務者とする処分禁止仮処分の登記を昭和33年7月8日に完了した。しかし、Dはその後、同年7月16日に上告人(第三取得者)らへ持分を譲渡し、同日付で所有権移転登記がなされた。被上告人はDの承継人らに対する本案訴訟で所有権移転登記請求を認められたため、上告人に対し、本件仮処分の効力に基づき登記の抹消を求めた。
事件番号: 昭和42(オ)427 / 裁判年月日: 昭和42年12月19日 / 結論: 棄却
仮登記原因の疎明の有無は、仮登記仮処分命令の効力に消長をきたすものではない。
あてはめ
被上告人は、Dを債務者として本件土地の処分禁止仮処分登記を済ませていた。その後のDから上告人への譲渡および登記は、仮処分の執行により禁止されていた処分行為に該当する。被上告人は本案訴訟においてDの承継人らに対して所有権を有することが認められ、勝訴判決を得ている。この場合、仮処分の効力によって上告人の取得は被上告人に対抗できなくなるため、被上告人は自ら登記を備える以前であっても、上告人に対してその所有権を主張し、妨害排除としての登記抹消請求を行うことができるといえる。
結論
被上告人の請求を認容し、上告人の所有権取得登記の抹消手続請求を認める。上告は棄却される。
実務上の射程
処分禁止仮処分の対抗力を認めた重要判例である。民事保全法下においても、仮処分登記に遅れる処分を債権者に対抗できなくする法的枠組みを支える。答案上は、二重譲渡のような対抗問題が生じている場面で、先行する仮処分登記がある場合の解決指針として活用する。
事件番号: 昭和57(オ)578 / 裁判年月日: 昭和60年11月26日 / 結論: 棄却
仮登記担保権の設定された不動産の第三取得者は、当該仮登記担保権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
事件番号: 昭和57(オ)452 / 裁判年月日: 昭和58年7月5日 / 結論: 棄却
不動産の売買の遡及的合意解除がされた場合、買主から右不動産を取得したが対抗要件としての登記を経由していない者は、たとえ仮登記を経由したとしても、民法五四五条一項但書にいう「第三者」として保護されない。
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。
事件番号: 昭和43(オ)1167 / 裁判年月日: 昭和44年9月11日 / 結論: 棄却
譲渡令による強制譲渡手続が譲渡令書の未交付の状態において譲渡令が廃止され、農地法が施行された場合は、該強制譲渡の手続を受け継ぐ手続は、農地法施行法一三条による農地法一五条およびこれに関連する法令による手続である。