仮登記担保関係において、債権者が履行遅滞を理由に代物弁済予約の完結の意思表示をし、目的不動産につき予め交付を受けていた登記に必要な書類を利用して仮登記に基づく所有権移転登記を経由した場合でも、清算義務を負うときは、債務者は、清算金の提供を受けるまでは債務を弁済して目的不動産を取り戻すことができる。
仮登記担保関係において債権者が履行遅滞を理由に目的不動産につき予め交付を受けていた登記手続に必要な書類を利用して所有権移転登記を経由した場合と目的不動産の取戻
民法369条,民法482条,不動産登記法2条,不動産登記法7条
判旨
仮登記担保において清算金の支払いが必要な場合、債権者が所有権移転登記を了した後であっても、清算金の提供があるまでは債務者は債務を弁済して担保関係を消滅させることができる。
問題の所在(論点)
仮登記担保の実行において、債権者が清算金の提供を行わずに所有権移転登記を了した場合、債務者は依然として債務を弁済して不動産の取戻権を行使できるか。また、その取戻権を転得者に対抗できるか。
規範
仮登記担保権の行使による所有権取得に清算金の支払いが必要な場合、債権者が債務者に対して清算金の提供を完了するまでは、債務者は債務を弁済することで仮登記担保関係を消滅させ、目的不動産を取り戻すことができる。
重要事実
債務者である被上告人は、債権者である上告人との間で仮登記担保を設定した。債権者は債務者の履行遅滞を理由に、設定時に預かっていた書類を利用して仮登記に基づく所有権移転登記を完了させたが、清算金の提供は行っていなかった。その後、債権者は第三者に対して当該不動産を転売した。被上告人は、清算金の提供がない以上、債務を弁済して不動産を取り戻せると主張して争った。
事件番号: 昭和57(オ)452 / 裁判年月日: 昭和58年7月5日 / 結論: 棄却
不動産の売買の遡及的合意解除がされた場合、買主から右不動産を取得したが対抗要件としての登記を経由していない者は、たとえ仮登記を経由したとしても、民法五四五条一項但書にいう「第三者」として保護されない。
あてはめ
本件では仮登記担保権の行使に際し清算金の支払いが必要な類型である。債権者は登記手続を完了させているものの、債務者に対し清算金の提供を終えていない。この段階では所有権の移転は確定的なものとはいえず、債務者による弁済と担保関係の消滅が認められる。したがって、清算金の提供がない本件において、被上告人が債務を弁済して取戻権を行使することは正当である。
結論
債権者が清算金の提供をするまでは、債務者は債務を弁済して仮登記担保関係を消滅させることができ、その取戻権を転得者に対抗できる。
実務上の射程
仮登記担保法制定前の判例であるが、現行の仮登記担保法11条(受戻権)の趣旨を先取りする内容である。答案上では、清算金支払債務と目的物引渡・登記債務が同時履行の関係に立つことを前提に、受戻権の行使時期の限界を論じる際の論拠となる。特に、債権者が登記を先行させたとしても、清算手続が未了であれば債務者の受戻権は消滅しないという文脈で使用する。
事件番号: 昭和42(オ)427 / 裁判年月日: 昭和42年12月19日 / 結論: 棄却
仮登記原因の疎明の有無は、仮登記仮処分命令の効力に消長をきたすものではない。
事件番号: 昭和41(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: 棄却
不動産の譲受人を債権者とし譲渡人を債務者として右不動産について処分禁止の仮処分登記が経由され、その後第三者に対する所有権移転登記が経由された場合において、仮処分債権者たる譲受人より譲渡人に対する本案訴訟としての所有権移転登記手続請求の訴と右第三者に対する所有権取得登記の抹消登記手続請求の訴とが併合して審理され、仮処分債…
事件番号: 昭和55(オ)1023 / 裁判年月日: 昭和58年3月25日 / 結論: 棄却
民法五七六条但書にいう「担保ヲ供シタルトキ」とは、売主が買主との合意に基づいて担保物権を設定したか、又は保証契約を締結したなどの場合をいい、担保の提供について買主の承諾を伴わない場合はこれにあたらない。
事件番号: 昭和57(オ)578 / 裁判年月日: 昭和60年11月26日 / 結論: 棄却
仮登記担保権の設定された不動産の第三取得者は、当該仮登記担保権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。