民法五七六条但書にいう「担保ヲ供シタルトキ」とは、売主が買主との合意に基づいて担保物権を設定したか、又は保証契約を締結したなどの場合をいい、担保の提供について買主の承諾を伴わない場合はこれにあたらない。
民法五七六条但書にいう「担保ヲ供シタルトキ」の意義
民法576条
判旨
民法576条但書にいう「担保を供したとき」とは、売主が買主との合意に基づいて担保物権を設定し、又は保証契約を締結した場合を指し、買主の承諾を伴わない担保の提供はこれに当たらない。
問題の所在(論点)
民法576条但書(買主による代金支払拒絶権を消滅させる要件)にいう「担保を供したとき」の意義、特に、担保の提供にあたり買主の承諾を必要とするか否か。
規範
民法576条但書に規定される「売主が相当の担保を供したとき」とは、売主が買主との合意に基づいて、抵当権等の担保物権を設定し、あるいは保証契約を締結するなどの行為を指す。したがって、担保の提供について買主の承諾(合意)を伴わない場合は、同条但書の適用はないと解すべきである。
重要事実
本件では、売買契約の目的物について権利を主張する者が現れたため、買主が代金の支払を拒絶した。これに対し売主側が、民法576条但書の「担保」を提供したと主張して代金の支払を求めたが、その担保提供にあたって買主の承諾や合意が得られていたかどうかが争点となった(具体的な担保の内容については判決文からは不明)。
事件番号: 昭和57(オ)452 / 裁判年月日: 昭和58年7月5日 / 結論: 棄却
不動産の売買の遡及的合意解除がされた場合、買主から右不動産を取得したが対抗要件としての登記を経由していない者は、たとえ仮登記を経由したとしても、民法五四五条一項但書にいう「第三者」として保護されない。
あてはめ
民法576条は、目的物について権利を主張する者がいる場合に買主に代金支払拒絶を認めることで、買主を保護する趣旨である。同条但書によるこの拒絶権の解消は、提供される担保の確実性について買主の関与を保障すべきである。本件において、仮に売主が一方的に何らかの担保を提供したとしても、それが買主との合意に基づかない、すなわち買主の承諾を伴わないものであれば、同条但書にいう「担保を供したとき」には該当しないと評価される。
結論
売主が提供した担保について買主の承諾がない限り、民法576条但書は適用されず、買主は引き続き代金の支払を拒絶することができる。
実務上の射程
代金支払拒絶権(576条)への対抗手段としての担保提供の有効性を画する重要な判例である。答案上では、売主による一方的な供託や、買主が納得していない保証人の提示では足りないことを論証する際に用いる。実務上は、担保の種類や内容について事前に合意を取り付けることが不可欠となる。
事件番号: 昭和33(オ)322 / 裁判年月日: 昭和36年7月14日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地法3条の許可を停止条件とする農地の売買契約において、知事による不許可の決定がなされたときは、特段の事情がない限り、売買はその効力を生ぜず確定的に不能となる。 第1 事案の概要:被上告人(買主)は上告人(売主)から、知事の許可を条件として本件農地を代金40万円で買い受け、代金を完済した。その際、…
事件番号: 昭和43(オ)356 / 裁判年月日: 昭和43年9月20日 / 結論: 棄却
一、土地の売買契約締結に際して、目的土地の一部を第三者が占有している場合に、売主が、右第三者の占有は権原に基づかないもので少なくとも一年位のうち明渡を受けて買主に目的土地を明け渡す旨言明したため、買主においてこれを信用し、右第三者使用部分の明渡が完了すると同時に残代金を支払うことを約したときには、右残代金の支払時期につ…
事件番号: 昭和52(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和54年2月22日 / 結論: 棄却
仮登記担保関係において、債権者が履行遅滞を理由に代物弁済予約の完結の意思表示をし、目的不動産につき予め交付を受けていた登記に必要な書類を利用して仮登記に基づく所有権移転登記を経由した場合でも、清算義務を負うときは、債務者は、清算金の提供を受けるまでは債務を弁済して目的不動産を取り戻すことができる。
事件番号: 昭和57(オ)578 / 裁判年月日: 昭和60年11月26日 / 結論: 棄却
仮登記担保権の設定された不動産の第三取得者は、当該仮登記担保権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。