一、土地の売買契約締結に際して、目的土地の一部を第三者が占有している場合に、売主が、右第三者の占有は権原に基づかないもので少なくとも一年位のうち明渡を受けて買主に目的土地を明け渡す旨言明したため、買主においてこれを信用し、右第三者使用部分の明渡が完了すると同時に残代金を支払うことを約したときには、右残代金の支払時期について不確定な期限を定めたものと解すべきである。 二、売買契約は成立したが未だ買主に目的不動産の所有権は移転していない時機において、右売買を原因とする買主のための所有権移転仮登記は有効である。
一、売買代金の支払時期について不確定な期限を定めたものと認められた事例 二、実体上の権利関係と異なる仮登記が有効とされた事例
民法135条
判旨
不確かな事実を債務の履行期限とした場合、その事実の発生が双方に確実視され、不発生の場合の合意がなければ「不確定期限」と解される。また、所有権移転前に売買を原因とする所有権移転仮登記がなされても、仮登記の順位保全的性格に鑑み、直ちに無効とはならない。
問題の所在(論点)
1. 「第三者の明渡完了」という不確実な事実を支払時期とした合意が、不確定期限としての効力を有するか。2. 物権変動の実体が生じる前になされた仮登記の有効性。
規範
1. 債務の履行時期に関し、将来発生するか否かが不確実な事実を基準とした場合であっても、当事者がその事実の到来を確実視しており、かつ到来しない場合の約定がないときは、不確定期限(民法412条2項参照)を定めたものと解するのが相当である。2. 仮登記は順位保全の効力を目的とし、権利関係自体の公示を目的とするものではないため、実体上の権利関係と若干の相違があっても当然に無効とはならない。
重要事実
被上告人(買主)は、亡D(売主)から土地を買い受ける際、第三者の占有部分について、Dが「1年以内に明渡を受けて明け渡す」と言明したことを信頼し、当該明渡完了と同時に残代金を支払う旨を合意した。また、所有権がまだ移転していない時期に、被上告人を権利者とする売買を原因とした所有権一部移転仮登記が経由されていた。
事件番号: 昭和57(オ)452 / 裁判年月日: 昭和58年7月5日 / 結論: 棄却
不動産の売買の遡及的合意解除がされた場合、買主から右不動産を取得したが対抗要件としての登記を経由していない者は、たとえ仮登記を経由したとしても、民法五四五条一項但書にいう「第三者」として保護されない。
あてはめ
1. 明渡の事実は、売主が不法占有として早期解決を明言しており、当事者双方において発生が確実視されていたといえる。また、明渡が実現しない場合の取決めもなされていない。したがって、明渡完了時を支払時期とする合意は、条件ではなく不確定期限を定めたものと解される。2. 仮登記は、将来の物権変動に備えた順位保全の手段である。売買契約に基づく移転の蓋然性がある以上、登記上の原因と実体に若干の時期的な齟齬があっても、その効力を否定すべきではない。
結論
本件支払時期の合意は不確定期限であり、また本件仮登記は順位保全の効力を有する有効なものとして維持される。
実務上の射程
不確定期限の典型例(「出世払」等と同様の枠組み)として、支払時期の解釈において活用できる。また、仮登記の有効性については、登記原因の厳密な一致よりも順位保全の必要性を重視する判例として、不動産登記法上の論点(105条等)において射程を有する。
事件番号: 昭和55(オ)1023 / 裁判年月日: 昭和58年3月25日 / 結論: 棄却
民法五七六条但書にいう「担保ヲ供シタルトキ」とは、売主が買主との合意に基づいて担保物権を設定したか、又は保証契約を締結したなどの場合をいい、担保の提供について買主の承諾を伴わない場合はこれにあたらない。
事件番号: 昭和57(オ)578 / 裁判年月日: 昭和60年11月26日 / 結論: 棄却
仮登記担保権の設定された不動産の第三取得者は、当該仮登記担保権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
事件番号: 昭和41(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: 棄却
不動産の譲受人を債権者とし譲渡人を債務者として右不動産について処分禁止の仮処分登記が経由され、その後第三者に対する所有権移転登記が経由された場合において、仮処分債権者たる譲受人より譲渡人に対する本案訴訟としての所有権移転登記手続請求の訴と右第三者に対する所有権取得登記の抹消登記手続請求の訴とが併合して審理され、仮処分債…
事件番号: 昭和36(オ)807 / 裁判年月日: 昭和38年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約に支払期日の定めがあっても、それが特定の条件成就を見越した予測に基づくものであり、先履行の合意がない限り、契約の効力発生により代金支払債務と所有権移転登記債務は同時履行の関係に立つ。この場合、売主が移転登記に先立つ前提手続を完了させない限り、買主は履行遅滞に陥らず、売主による解除は認められ…