土地の売買残代金の支払期日を昭和二四年六月末日と定めたことは当事者間に争がないと判示し、他方右残代金は右土地使用目的変更のための県知事の許可があつた後に支払うことを約したものと判示したことが理由そごにならないとされた事例。
判旨
売買契約に支払期日の定めがあっても、それが特定の条件成就を見越した予測に基づくものであり、先履行の合意がない限り、契約の効力発生により代金支払債務と所有権移転登記債務は同時履行の関係に立つ。この場合、売主が移転登記に先立つ前提手続を完了させない限り、買主は履行遅滞に陥らず、売主による解除は認められない。
問題の所在(論点)
売買契約上の支払期日の定めがある場合に、契約の停止条件成就(知事の許可)後、代金支払債務が先履行義務となるか、それとも所有権移転登記債務と同時履行の関係に立つか。また、移転登記の前提となる地目変換登記が未了であることは、買主の履行遅滞の成否に影響するか。
規範
売買契約において残代金の支払期日が定められている場合であっても、それが特定の行政上の許可等の取得を見越した便宜上の期日に過ぎず、当事者間に代金の先履行を義務付ける趣旨が認められない特段の事情があるときは、契約の効力発生(条件成就)に伴い、代金支払債務と所有権移転登記債務は民法533条により同時履行の関係に立つ。また、売主が負うべき移転登記手続の前提となる地目変換等の義務が未了である以上、買主は代金支払につき履行遅滞の責めを負わない。
重要事実
上告人(売主)と被上告人(買主)は、本件土地につき将来の宅地売買を目的として、県知事による使用目的変更の許可を停止条件とする売買契約を締結した。契約上、残代金の支払期日は昭和24年6月末日とされていた。この期日は、当時実施中の土地区画整理に伴う許可が同日までに得られるとの予測に基づき設定されたものであったが、実際には許可が遅れた。その後、許可は得られたが、上告人は地目変換登記等の手続を行わないまま、被上告人に対し代金支払の催告および契約解除の通知を行った。
あてはめ
本件の支払期日の定めは、期日までに知事の許可が得られ登記が可能になると予測して便宜上定められたものに過ぎず、買主に代金の先履行を認めた趣旨ではないと解される。したがって、本件売買契約は許可という停止条件の成就により効力を生じ、代金支払と所有権移転登記の両債務は同時履行の関係に立つ。本件では、移転登記の前提となる地目変換登記がなされていない以上、その理由が土地区画整理法上の制約によるものか否かを問わず、買主の支払債務は履行遅滞に陥らないと評価される。
事件番号: 昭和38(オ)1104 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 棄却
第一審裁判所が尋問した証人につき控訴審で再尋問の申出があつた場合、民訴法第一八七条第三項後段を適用することを要しない。
結論
被上告人は履行遅滞に陥っていないため、上告人による本件売買契約の解除はその効力を生じない。上告を棄却する。
実務上の射程
契約書上に形式的な支払期日の定めがあっても、公法上の制限(農地法や都市計画法等)を背景とする条件付契約の場合、その期日の実質的意味(先履行の合意の有無)が問われる。同時履行関係が維持される場合、自己の義務(前提手続を含む)の履行を提供しない限り、相手方を履行遅滞に陥らせて解除することはできないという論法で用いる。
事件番号: 昭和43(オ)356 / 裁判年月日: 昭和43年9月20日 / 結論: 棄却
一、土地の売買契約締結に際して、目的土地の一部を第三者が占有している場合に、売主が、右第三者の占有は権原に基づかないもので少なくとも一年位のうち明渡を受けて買主に目的土地を明け渡す旨言明したため、買主においてこれを信用し、右第三者使用部分の明渡が完了すると同時に残代金を支払うことを約したときには、右残代金の支払時期につ…
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。
事件番号: 昭和37(オ)1110 / 裁判年月日: 昭和38年3月28日 / 結論: 棄却
米国に移住のため在日財産処分の必要に迫られた者が渡米の日とにらみ合せて売買代金支払および登記手続履行の日時を定めて建物の売買契約をした場合でも、右期日までに代金支払がなされなければ相当の不便を感じることが推測されるだけで売買の目的を達しえない事情までは認められない以上、これを定期行為とみることはできない。
事件番号: 昭和37(オ)1157 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 棄却
債権者は、債務者に代位してその債務者に属する代位権を行使することができる。