債権者は、債務者に代位してその債務者に属する代位権を行使することができる。
代位権の代位行使の許可。
民法423条
判旨
売買契約において、登記簿上の表示を誤解して契約書に事実と異なる地番を記載したとしても、当事者の真意が特定の土地のみを対象としていたのであれば、記載された地番の土地についての意思表示の合致は認められない。
問題の所在(論点)
契約書上に特定の土地の地番が記載されている場合、当事者が当該土地を売買の対象外とする共通の認識を有していたとしても、当該土地についての意思表示の合致(売買契約の成立)が認められるか。
規範
契約の解釈においては、契約書上の表示(文言)のみならず、当事者の主観的意図および客観的な現地の状況を総合的に勘案し、真の「意思表示の合致」があったか否かを判断すべきである。表示と真意が合致しない場合、当事者の双方が真意を認識し、かつその真意に従う意思を有していたときは、誤って記載された表示内容に基づく合意は成立しない(誤表示無害の原則の法理)。
重要事実
売主Dの代理人と買主Eは、D所有の土地(d番地と、本件土地であるd番地のe)のうち、石垣上の土地(d番地)のみを売買する目的で交渉していた。現地には高さ約4メートルの石垣があり、石垣下の本件土地には電車軌道が敷設されていた。双方は現地の模様から、売買対象は石垣上の土地(d番地)のみであり、電車軌道が含まれる本件土地は対象外であることを認識していた。しかし、登記簿上の表示を誤解した結果、売買契約書にd番地だけでなく本件土地の地番をも記入してしまい、本件土地についても移転登記がなされた。
事件番号: 昭和35(オ)507 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
意思表示に際し、動機が表明されなくても、該動機が意思表示の内容とされていないと認めるときは、動機に存する錯誤は意思表示を無効ならしめない。
あてはめ
本件では、地形上、売買対象とされたd番地と本件土地との間には石垣があり、本件土地には電車軌道が敷設されていた。売主側は「石垣上の土地」である旨を説明し、買主もその旨を了解して契約に及んでいる。契約書に本件土地の地番が記載されたのは、あくまで登記簿上の表示に対する誤解に基づく事務的なミスに過ぎない。したがって、石垣下の本件土地については、当事者間にこれを売買する旨の意思表示の合致はそもそも存在しなかったといえる。
結論
本件土地についての売買契約は成立していない。したがって、本件土地の登記名義人は、真実の所有権者またはその債権代位権者に対し、原因無効による登記抹消義務を負う。
実務上の射程
契約書の文言と当事者の真意が乖離している場合の解釈指針として重要。特に不動産取引において、現地の状況や当事者の属性から「真の合意対象」が特定できる場合、書面上の誤記を排除して合意の存否を判断できる。司法試験では、民法95条(錯誤)の適用の前段階としての「合意の成否・内容の確定」の議論として位置づけられる。
事件番号: 昭和27(オ)890 / 裁判年月日: 昭和30年10月4日 / 結論: 破棄差戻
甲乙間に甲所有の(い)の土地並びに同地上の家屋(店舗および附属工場)の売買が成立した場合において、本来(い)の土地には、右家屋のほか、なお甲所有の土蔵が存するにかかわらず登記簿上、土蔵は隣地たる甲所有の(ろ)の土地に所在することになつており、甲乙双方とも売買成立後相当日時を経過するまで、右土蔵敷地が(い)の土地の一部で…
事件番号: 昭和38(オ)1137 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
甲乙の共有にかかる家屋について、甲が乙の作成名義を偽造して、売買による前所有権の移転登記をした場合において、甲の共有持分に関しては、右偽造による登記の無効を生ずることはない。