当該土地が既に公立中学校の敷地として使用されているからといつて、その土地を目的とする契約の意思表示を詐欺により取り消すことは、権利の濫用といわねばならないことはない。
詐欺による意思表示の取消が権利濫用にあたらないとされた事例。
民法1条,民法96条
判旨
詐欺による意思表示の取消しについて、権利濫用の主張が認められるためには、取消権の行使自体が信義則に反する特段の事情が必要であるが、本件の事実関係の下では権利濫用とは解されない。
問題の所在(論点)
詐欺による意思表示の取消権の行使が、権利濫用として制限される余地があるか。また、原審で主張しなかった事項を上告理由として主張できるか。
規範
詐欺による意思表示の取消し(民法96条1項)がなされた場合、その取消権の行使が権利濫用(民法1条3項)に当たるとして否定されるためには、取消しを認めることが著しく正義に反するといえる客観的事実が必要である。特に、原審が認定した事実関係に基づき、意思表示の取消しを正当と判断した場合には、これと矛盾するような特段の事情がない限り、権利濫用と解する余地はない。
重要事実
被上告人が上告人らに対し、詐欺を理由とする意思表示の取消しを主張した事案である。上告人側は、原審において詐欺による取消しの成立が認められたことに対し、その取消権の行使が権利濫用にあたると主張して上告したが、当該権利濫用の主張は原審(控訴審)では具体的に主張・判断されていなかった。また、原審は代地の売買予約等に関する事実認定を行い、上告人側の主張を退けていた。
あてはめ
最高裁は、原判決が認定した事実関係(詐欺の成立を前提とする取消しの正当性)を前提とする限り、被上告人による取消しの意思表示を権利濫用と解する余地はないと判断した。また、売買予約完結権の行使等、上告人が原審で主張していなかった事項については、上告審での判断の対象とならないとした。
結論
被上告人による詐欺を理由とした取消しは有効であり、権利濫用には当たらない。上告人らの上告を棄却する。
実務上の射程
答案作成上、詐欺による取消しを主張する場面で相手方から権利濫用の抗弁が出された際の反論として活用できる。本判決は、事実認定に基づき取消しが正当化される場合には、権利濫用の適用を極めて厳格に制限していることを示唆している。
事件番号: 昭和33(オ)972 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 棄却
原審認定の事実関係のもとでは、建物賃貸借契約の解除権行使をもつて権利濫用ということはできない。