土地の買受人の、前主から賃借して幼稚園の運動場に使用している対抗力を具備しない賃借人に対する明渡請求が権利の濫用にあたらないとされた事例
判旨
土地明渡請求が権利の濫用に該当するか否かは、具体的な事案の諸事情を総合考慮して判断されるべきであり、本件においては権利の濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
土地所有者による土地明渡請求が、民法1条3項の「権利の濫用」に該当し、その行使が制限されるか。
規範
権利の行使が、その目的を逸脱し、社会通念上許容される限度を超えて相手方に著しい不利益を与えるなどの事情がある場合には、民法1条3項に基づき権利の濫用として許されない。
重要事実
上告人(被告)が占有する本件土地に対し、被上告人(原告)が土地の明渡しを求めて提訴した。これに対し、上告人は当該明渡請求が権利の濫用に該当すると主張して争ったが、原審(第2審)は権利の濫用には当たらないと判断した。上告人は、原審の判断には憲法違反および権利濫用の法理の誤用があるとして上告した。
あてはめ
最高裁判所は、原審が認定した事実関係および記録に照らせば、被上告人による本件土地明渡請求を権利の濫用に当たらないとした判断は正当として是認できるとした。上告人の主張は独自の私見に過ぎず、具体的な権利濫用を基礎付ける事実関係の提示が不十分であると解される。
結論
本件土地明渡請求は権利の濫用には当たらず、被上告人の請求は認められる(上告棄却)。
事件番号: 昭和32(オ)890 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の明渡請求が権利の乱用に該当するか否かは、具体的な事実関係に基づき、請求によって得られる利益と相手方の被る不利益等を比較衡量して判断されるべきであり、本件においては権利の乱用にはあたらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)らが占有する本件土地につき、被上告人(原告)が土地明渡を求めた事案であ…
実務上の射程
権利濫用の主張は、土地明渡請求に対する防御策として頻用されるが、本判決は原審の裁量を広く認めている。答案上は、本判決を直接引用するよりも、信義則・権利濫用の一般的判断枠組み(目的の正当性、不利益の程度、社会妥当性等)を提示した上で、具体的妥当性を検討する際の論拠として位置づけるのが適切である。
事件番号: 昭和37(オ)1412 / 裁判年月日: 昭和39年2月7日 / 結論: 棄却
当該土地が既に公立中学校の敷地として使用されているからといつて、その土地を目的とする契約の意思表示を詐欺により取り消すことは、権利の濫用といわねばならないことはない。
事件番号: 昭和33(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者が土地の使用を容認していたとはいえない状況において、当該土地の明渡し等を求める請求は、特段の事情がない限り権利の濫用(民法1条3項)には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)が本件土地を使用していたところ、被上告人ら(原告)が土地所有権に基づき本訴請求(明渡し等)を提起した。上告…