現況が農地である土地を目的とする売買契約締結後に、右土地を含む周辺一帯が都市計画区域に指定され、順次宅地として分譲されるなど客観的事情が変化し、かつ、買主がこれに地盛りをして売主の承諾のもとに建物を建築するなどしたために、右土地が完全に宅地に変じた場合には、右売買契約は、知事の許可なしに効力を生ずるものと解すべきである。
農地を目的とする売買契約締結後に目的の土地が農地でなくなつた場合の売買契約の効力
農地法2条,農地法5条
判旨
農地の売買契約において、農地法上の許可が効力発生要件とされていた場合でも、その後の客観的な状況変化により土地が宅地に変じたときは、もはや許可は不要となり、契約は当然に完全な効力を生ずる。
問題の所在(論点)
農地の売買契約締結後、知事の許可を得る前に土地が客観的に宅地へ転換した場合、農地法上の許可なくして売買契約の効力が生ずるか。
規範
農地法3条または5条の許可を停止条件とする売買契約において、土地の客観的状況が変化して農地としての性格を失い、完全に宅地に変じた場合には、農地法の規制を及ぼす必要がなくなる。したがって、当初は許可が効力発生の要件であったとしても、宅地への転換によって当該要件は不要に帰し、許可を経ることなく契約は確定的に効力を生ずる。
重要事実
売主Aは、農地であることを前提に土地をBに売却し、Bが居宅を建築することを了承して代金の約9割を受領し土地を引渡した。Bは土地に地盛り等の整地を施して二階建居宅を建築し、庭園や菜園を造成した。本件土地周辺は都市計画区域に指定され宅地化が進んでいた。Aは許可申請への協力義務不履行を理由に契約解除を主張し、仮登記の抹消を求めた。
事件番号: 昭和38(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和39年6月9日 / 結論: 棄却
農地につき知事の許可なくして為された売買契約でも、その後該農地が適法に宅地化されたときは、そのときから当然効力を生ずると解すべきである。
あてはめ
本件土地は元来原野であり、一部に農地性が認められたものの、周辺の宅地化という客観的事情の変化に伴い、Bによる地盛りや建築工事によって完全に宅地に変じたといえる。また、売主A自身も宅地としての利用を容認し、建築承諾書の交付等を通じて宅地化を促進していた。このような事情の下では、もはや農地法の保護対象たる農地とは認められないため、許可要件は不要となったと解される。なお、Aによる解除主張については、自ら申請書類を整える等の準備をせず一方的に相手方の不履行を問うものであり、認められない。
結論
本件土地が宅地に変じた時点で、農地法上の許可を待たずして売買契約は完全に効力を生ずる。したがって、Aによる解除は認められず、Bの所有権移転登記請求権が認められる。
実務上の射程
農地転用を目的とする売買(農地法5条)において、許可前に事実上転用が完了し農地性が喪失した場合の処理を示す。答案では、契約の効力発生時期や農地法の適用範囲が問題となる場面で、土地の「客観的な現況」を重視するロジックとして活用できる。
事件番号: 昭和43(オ)1167 / 裁判年月日: 昭和44年9月11日 / 結論: 棄却
譲渡令による強制譲渡手続が譲渡令書の未交付の状態において譲渡令が廃止され、農地法が施行された場合は、該強制譲渡の手続を受け継ぐ手続は、農地法施行法一三条による農地法一五条およびこれに関連する法令による手続である。
事件番号: 昭和59(オ)211 / 裁判年月日: 昭和61年3月17日 / 結論: 破棄差戻
農地の売買に基づく県知事に対する所有権移転許可申請協力請求権の消滅時効期間が経過してもその後に右農地が非農地化した場合には、買主に所有権が移転し、非農地化後にされた時効の援用は効力を生じない。
事件番号: 昭和41(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: 棄却
不動産の譲受人を債権者とし譲渡人を債務者として右不動産について処分禁止の仮処分登記が経由され、その後第三者に対する所有権移転登記が経由された場合において、仮処分債権者たる譲受人より譲渡人に対する本案訴訟としての所有権移転登記手続請求の訴と右第三者に対する所有権取得登記の抹消登記手続請求の訴とが併合して審理され、仮処分債…
事件番号: 昭和55(オ)1023 / 裁判年月日: 昭和58年3月25日 / 結論: 棄却
民法五七六条但書にいう「担保ヲ供シタルトキ」とは、売主が買主との合意に基づいて担保物権を設定したか、又は保証契約を締結したなどの場合をいい、担保の提供について買主の承諾を伴わない場合はこれにあたらない。