農地につき知事の許可なくして為された売買契約でも、その後該農地が適法に宅地化されたときは、そのときから当然効力を生ずると解すべきである。
農地につき知事の許可なくして為された売買契約はその後該農地が適法に宅地化された場合に当然有効となるか。
農地調整法4条,農地法3条
判旨
農地法上の許可を要する農地の売買契約は、転用許可を受けて宅地化が完了した時点で、権利移転について農地法上の許可を要しなくなり、当然に契約の効力を生じる。
問題の所在(論点)
農地法上の許可を停止条件とする農地の売買契約において、許可が得られる前に転用許可に基づく宅地化が完了した場合、当該契約の効力はどうなるか。
規範
農地法上の許可なく締結された農地の売買契約は、当該許可を法定条件として成立し、許可があるまでは効力が生じない不確定な状態にある。しかし、当該土地が転用許可に基づき現実に宅地化された場合には、その時点以降、権利移転について知事の許可を要しなくなるため、売買契約は当然に効力を生じる。
重要事実
売主である上告人と買主Dとの間で、土地(一部農地を含む)の売買契約が締結された。契約当時、農地部分については農地法上の許可が得られていなかったが、その後、上告人による転用許可申請に基づき、知事から宅地への転用許可がなされた。買主Dはこの許可に基づき、当該農地部分の宅地化工事を完了させた。その後、当該売買契約の効力が争点となった。
事件番号: 昭和30(オ)914 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地売買において知事の許可を得る手続をする約束がある場合、許可前の引渡しや耕作の開始という事実のみをもって、直ちに農地法違反の無効な契約と断定することはできない。 第1 事案の概要:売主と買主との間で本件農地の売買契約が締結された際、直ちに知事の許可を受ける手続をすることが約束されていた。しかし、…
あてはめ
本件売買契約の目的物の一部は契約当時農地であり、本来は農地法上の許可がなければ権利移転の効力を生じない不確定な状態にあった。しかし、その後の経過において、売主自身の申請により適法な転用許可がなされ、これに基づき買主の手で現実に宅地化が実施・完了されている。この事実により、当該土地はもはや農地法上の権利移転許可を要する「農地」ではなくなったといえる。したがって、許可を要する前提条件が消滅した以上、不確定であった契約は宅地化完了の時点で当然に有効になると解される。
結論
本件売買契約のうち農地であった部分は、転用許可に基づき宅地化された時に当然に効力を生じる。
実務上の射程
農地法3条許可を停止条件とする契約が、同法4条や5条の転用プロセスを経て農地性を喪失した場合の契約の運命を示す。実務上、契約の有効性を主張する側としては、現実に宅地化が完了し許可が不要な状態に至ったことを立証することで、3条許可が未了であっても履行請求(所有権移転登記請求等)が可能となる。信義則を持ち出すまでもなく、物的な性質変更により当然に有効化するという構成は、物権変動の明確性の観点から重要である。
事件番号: 昭和42(オ)429 / 裁判年月日: 昭和42年10月27日 / 結論: 棄却
農地を目的とする売買契約締結後に、売主が目的物上に土盛りをし、その上に建物が建築され、そのため農地が恒久的に宅地となつた等買主の責に帰すべからざる事情により農地でなくなつた場合には、右売買契約は、知事の許可なし完全に効力を生ずると解するのが相当である。
事件番号: 昭和44(オ)498 / 裁判年月日: 昭和44年10月31日 / 結論: 棄却
現況が農地である土地を目的とする売買契約締結後に、右土地を含む周辺一帯が都市計画区域に指定され、順次宅地として分譲されるなど客観的事情が変化し、かつ、買主がこれに地盛りをして売主の承諾のもとに建物を建築するなどしたために、右土地が完全に宅地に変じた場合には、右売買契約は、知事の許可なしに効力を生ずるものと解すべきである…
事件番号: 昭和39(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: その他
現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可を条件として所有権移転登記を請求する訴訟が提起された場合には、裁判所は、宅地としての売買による所有権移転登記の請求についてまで前記条件を付する趣旨か否かを釈明して判断するのが相当である。
事件番号: 昭和34(オ)642 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の許可を停止条件とする農地の売買契約において、地目が畑であり実態が農地であると認められる場合には、その性質に基づき適法な事実認定がなされるべきである。 第1 事案の概要:被上告人らは、上告人から本件土地を北海道知事の許可を停止条件として買い受けた。本件土地の地目は「畑」であり、原審において…