現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可を条件として所有権移転登記を請求する訴訟が提起された場合には、裁判所は、宅地としての売買による所有権移転登記の請求についてまで前記条件を付する趣旨か否かを釈明して判断するのが相当である。
一 現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可申請手続を命じた判決を違法とした事例 二 現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可を条件とする所有権移転登記請求がされたとして裁判所のとるべき措置
農地法3条,民訴法127条,民訴法226条
判旨
農地法上の許可を条件とする農地売買において、目的物が既に現況宅地化している場合には、売主は知事に対する許可申請手続義務を負わず、また当該許可を停止条件とする将来の給付の訴えも認められない。
問題の所在(論点)
1.農地法上の許可を条件とする売買契約の法的性質。2.現況宅地化した土地について、農地法上の許可申請手続義務が認められるか。3.不必要な条件を付して将来の給付の訴えがなされた場合の裁判所の措置。
規範
1.農地法上の許可を必要とする売買契約において、知事の許可は民法上の停止条件ではなく「法定条件」である。2.目的物が既に現況宅地化している場合、売主は農地法3条所定の許可申請手続をする義務を負わない。3.本来不要な知事の許可を条件として所有権移転登記を求める訴えが提起された場合、裁判所は釈明権を行使し、無条件の移転登記を求める意思かを確認した上で判断すべきである。
重要事実
被上告人(買主)は、上告人(売主)の先代との間で本件土地の売買契約を締結した。契約には知事の許可があった時に効力を生ずる旨の合意があった。被上告人は、知事に対する許可申請手続の履行と、許可があったことを条件とする所有権移転登記手続(将来の給付の訴え)を求めて提訴した。原審は、本件土地の一部が現況宅地であることを認めつつ、当該土地についても許可申請手続および条件付登記手続を命じたため、上告人が上告した。
事件番号: 昭和30(オ)321 / 裁判年月日: 昭和32年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売買において、都道府県知事の許可を停止条件とする契約を締結することは農地法(旧農地調整法)に反せず、許可が得られた場合には、売主は地目変換の申告や登記手続等の契約上の義務を履行する責任を負う。 第1 事案の概要:買主(被上告人)は、農地を工場敷地として利用するため、売主(上告人)との間で本件…
あてはめ
1.農地法上の許可は法定条件にすぎず、これを付した契約は有効である。2.しかし、現況が宅地である土地については、農地法3条の適用外であり、売主に許可申請手続を命じる根拠がない。原判決が宅地部分についても許可申請義務を認めた点は法令の解釈を誤っている。3.また、被上告人が不必要な許可を条件として登記を求めている点については、裁判所は釈明権を行使して無条件の登記請求に転じるかを確認すべきであったが、これを怠った。
結論
現況宅地部分について許可申請手続および条件付登記を認めた原判決は破棄を免れない。当該土地が特定できないため、更なる審理のため差し戻す。
実務上の射程
農地売買における許可申請請求および将来の給付の訴え(条件付登記請求)の可否を論じる際の基本判例。現況が農地でない場合の申請義務の否定と、釈明権行使の必要性を示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和42(オ)429 / 裁判年月日: 昭和42年10月27日 / 結論: 棄却
農地を目的とする売買契約締結後に、売主が目的物上に土盛りをし、その上に建物が建築され、そのため農地が恒久的に宅地となつた等買主の責に帰すべからざる事情により農地でなくなつた場合には、右売買契約は、知事の許可なし完全に効力を生ずると解するのが相当である。
事件番号: 昭和38(オ)1272 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
農地の買主は、その必要があるかぎり、売主に対し、知事の許可を条件として農地所有権移転登記手続請求をすることができる。
事件番号: 昭和39(オ)1397 / 裁判年月日: 昭和41年2月24日 / 結論: 棄却
知事の許可なくしてなされた農地の売買契約においても、特段の事情のないかぎり、売主は知事に対し所定の許可申請手続をなすべき義務を負い、また、もしその許可があつたときは、買主のため所有権移転登記手続をなすべき義務を負担するに至るものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和36(オ)360 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
控訴人が「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。被控訴人の附帯控訴を棄却する。」旨の裁判を求め、第一審で棄却された反訴請求には何ら言及していない場合には、右反訴請求については、不服申立の範囲外であるとして控訴審の判断が示されなくても違法でない。