農地の買主は、その必要があるかぎり、売主に対し、知事の許可を条件として農地所有権移転登記手続請求をすることができる。
知事の許可を条件とする農地所有権移転登記手続請求の適否。
民訴法226条,農地法5条
判旨
農地の確定的な売買契約において、知事の許可がなされたことを条件として所有権移転登記手続を求めることは、将来の給付の訴えとして許容される。
問題の所在(論点)
農地法上の許可を要する農地の確定的な売買契約において、将来の給付の訴えとして、知事の許可がなされることを条件に所有権移転登記手続を請求することが認められるか。
規範
将来の給付の訴え(民事訴訟法135条、旧226条)が認められるためには、請求権発生の基礎となるべき法的関係が既に存在し、将来その義務の履行期が到来することが確実であること、および「あらかじめその請求をする必要がある」ことが認められる必要がある。農地の売買において、知事の許可が効力発生要件である場合であっても、契約自体が確定的に締結されているときは、許可取得を条件とする登記請求は適法である。
重要事実
被告(上告人)は、原告(被上告人)に対し、本件農地(畑)を確定的に売り渡す契約を締結した。この契約は停止条件付売買ではなく、確定的な売買であった。農地法5条に基づき、農地の所有権移転には都道府県知事の許可が必要とされるが、上告人は当該許可申請手続や、許可を条件とした所有権移転登記手続を拒んでいた。そのため、被上告人は上告人に対し、許可申請手続および許可を条件とする移転登記手続を求めて提訴した。
事件番号: 昭和36(オ)360 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
控訴人が「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。被控訴人の附帯控訴を棄却する。」旨の裁判を求め、第一審で棄却された反訴請求には何ら言及していない場合には、右反訴請求については、不服申立の範囲外であるとして控訴審の判断が示されなくても違法でない。
あてはめ
本件において、上告人と被上告人の間には、本件農地を確定的に売り渡す旨の売買契約が存在し、請求権の基礎となる法的関係が既に成立している。知事の許可が得られれば直ちに所有権移転の効力が生じる関係にあり、上告人が現に義務の履行を拒んでいる以上、許可がなされた場合を予定して「あらかじめ請求する必要」が認められる。また、農地の売買契約締結後に知事の許可を求めることは農地法上も許容される。したがって、本件請求は将来の給付の訴えとして適法な要件を具備しているといえる。
結論
将来の給付の訴えとして、知事の許可を条件とする所有権移転登記手続を請求することは認められる。
実務上の射程
農地売買における条件付登記請求の可否を判断した重要判例である。答案上は、農地法が効力発生要件であることを前提としつつ、債権的な合意が先行して成立している場合に、将来の給付の訴えの要件(あらかじめ請求する必要)を検討する局面で使用する。また、同時履行の抗弁権が主張されなかった場合の判決のあり方や、土地所有権喪失に伴う建物収去義務についても言及されており、民法・民訴法の複合問題で参照しうる。
事件番号: 昭和32(オ)592 / 裁判年月日: 昭和35年2月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売買契約が県知事の許可を効力発生条件として締結された場合、当該契約は有効であり、売主は許可申請手続に協力する義務を負う。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で、県知事の許可を効力発生の条件として農地の売買契約が締結された。しかし、売主である上告人が許可申請手続に協力しなかったため、買主…
事件番号: 昭和39(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: その他
現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可を条件として所有権移転登記を請求する訴訟が提起された場合には、裁判所は、宅地としての売買による所有権移転登記の請求についてまで前記条件を付する趣旨か否かを釈明して判断するのが相当である。
事件番号: 昭和39(オ)1397 / 裁判年月日: 昭和41年2月24日 / 結論: 棄却
知事の許可なくしてなされた農地の売買契約においても、特段の事情のないかぎり、売主は知事に対し所定の許可申請手続をなすべき義務を負い、また、もしその許可があつたときは、買主のため所有権移転登記手続をなすべき義務を負担するに至るものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和34(オ)642 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の許可を停止条件とする農地の売買契約において、地目が畑であり実態が農地であると認められる場合には、その性質に基づき適法な事実認定がなされるべきである。 第1 事案の概要:被上告人らは、上告人から本件土地を北海道知事の許可を停止条件として買い受けた。本件土地の地目は「畑」であり、原審において…