判旨
農地の売買契約が県知事の許可を効力発生条件として締結された場合、当該契約は有効であり、売主は許可申請手続に協力する義務を負う。
問題の所在(論点)
農地法上の許可を停止条件とする農地の売買契約の有効性、および売主が許可申請手続に協力する義務を負うか否か。
規範
農地法上の許可を条件とする農地の売買契約は、債権的効力において有効に成立する。また、かかる契約を締結した売主は、契約の目的を達するために必要な信義則上の付随的義務として、県知事(現行法上は農業委員会等)への許可申請手続に協力する義務を負担する。
重要事実
上告人と被上告人との間で、県知事の許可を効力発生の条件として農地の売買契約が締結された。しかし、売主である上告人が許可申請手続に協力しなかったため、買主である被上告人が上告人に対して許可申請手続をなすべきことを求めて提訴した。
あてはめ
本件売買契約は県知事の許可を効力発生の条件として締結されており、このような条件付契約が有効であることは当裁判所の判例(最判昭33.6.5等)に照らして明らかである。そして、契約が有効に成立している以上、当事者はその目的を達成するために必要な協力を行うべき信義則上の義務を負う。したがって、売主である上告人は、契約の効力を発生させるための前提となる許可申請手続に協力する義務を免れない。
結論
本件売買契約は有効であり、売主である上告人は県知事の許可申請手続に協力する義務を負う。したがって、上告人に許可申請手続を命じた原判決は正当である。
実務上の射程
農地法3条等の許可を要する取引において、許可前であっても契約が債権的に有効であることを確認し、協力義務(移転登記請求権を保全するための前提となる義務)を認めるための標準的な規範として活用できる。民法上の条件付権利の侵害禁止や信義則の具体化として構成する際に有用である。
事件番号: 昭和38(オ)1272 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
農地の買主は、その必要があるかぎり、売主に対し、知事の許可を条件として農地所有権移転登記手続請求をすることができる。
事件番号: 昭和31(オ)1020 / 裁判年月日: 昭和34年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の所有権移転を目的とする売買契約において、知事等の許可が得られることを条件とする契約は有効であり、売主は許可申請に協力すべき義務を負う。 第1 事案の概要:農地の所有権移転を目的として、知事の許可を条件とする売買契約が締結された。その後、売主側が当該契約の有効性や、許可申請への協力義務の有無に…
事件番号: 昭和34(オ)642 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の許可を停止条件とする農地の売買契約において、地目が畑であり実態が農地であると認められる場合には、その性質に基づき適法な事実認定がなされるべきである。 第1 事案の概要:被上告人らは、上告人から本件土地を北海道知事の許可を停止条件として買い受けた。本件土地の地目は「畑」であり、原審において…
事件番号: 昭和42(オ)30 / 裁判年月日: 昭和43年4月4日 / 結論: 棄却
共有者の一人が、権限なく、共有物を自己の単独所有に属するものとして他に売り渡した場合でも、売買契約は有効に成立し、自己の持分をこえる部分については、他人の権利の売買としての法律関係を生ずるとともに、自己の持分の範囲内においては、約旨に従つた履行義務を負う。
事件番号: 昭和30(オ)321 / 裁判年月日: 昭和32年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売買において、都道府県知事の許可を停止条件とする契約を締結することは農地法(旧農地調整法)に反せず、許可が得られた場合には、売主は地目変換の申告や登記手続等の契約上の義務を履行する責任を負う。 第1 事案の概要:買主(被上告人)は、農地を工場敷地として利用するため、売主(上告人)との間で本件…