共有者の一人が、権限なく、共有物を自己の単独所有に属するものとして他に売り渡した場合でも、売買契約は有効に成立し、自己の持分をこえる部分については、他人の権利の売買としての法律関係を生ずるとともに、自己の持分の範囲内においては、約旨に従つた履行義務を負う。
共有者の一人が共有物を自己の単独所有に属するものとして売却した場合の法律関係
民法251条,民法560条
判旨
共有者の一人が共有物を単独所有物として売却した場合、自己の持分については有効な売買として履行義務を負い、他人の持分については他人の権利の売買として有効に成立する。また、知事の許可を要する農地売買においても、売主は特段の事情のない限り許可申請手続義務を負い、条件付移転登記手続等の請求も認められる。
問題の所在(論点)
1. 共有物全部を単独所有物として売却した契約の効力および持分に応じた履行義務の成否。 2. 知事の許可を要する農地売買において、売主が負うべき手続上の義務の範囲。
規範
1. 共有者の一人が、権限なく共有物を自己の単独所有物として売却した場合、その売買契約は有効に成立する。この場合、自己の持分を超える部分については他人の権利の売買(民法560条参照)としての法律関係を生じ、自己の持分の範囲内では契約の定めに従った履行義務を負う。 2. 農地の売買契約は、知事の許可がない限り所有権移転の効力は生じないが、債権的には有効であり、特段の事情のない限り、売主は知事に対する許可申請手続義務を負い、許可を条件とする所有権移転登記手続等の義務を負担する。
重要事実
共有者の一人である上告人が、権限がないにもかかわらず共有地を自己の単独所有物として被上告人に売却した。当該物件は農地であったため、農地法上の知事の許可が必要であったが、上告人は契約の無効等を主張して許可申請手続や登記手続に応じなかった。そのため、被上告人が上告人に対し、許可申請手続および許可を条件とする所有権移転登記手続等を求めて提訴した。
事件番号: 昭和32(オ)592 / 裁判年月日: 昭和35年2月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売買契約が県知事の許可を効力発生条件として締結された場合、当該契約は有効であり、売主は許可申請手続に協力する義務を負う。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で、県知事の許可を効力発生の条件として農地の売買契約が締結された。しかし、売主である上告人が許可申請手続に協力しなかったため、買主…
あてはめ
1. 本件売買において、上告人は自己の持分を超える部分については他人の権利の売買として契約上の義務を負い、自己の持分については当然に履行義務を負う。したがって、共有者全員の同意がないことを理由に契約全体の無効を説くことはできない。 2. 農地法上の許可は移転の効力発生要件であるが、契約自体が効力を有しないわけではない。許可申請手続義務は許可が得られる見込みの有無にかかわらず認められるべきであり、本件訴訟の経過に照らせば、将来の条件成就に備えた条件付登記請求等の必要性も認められる。
結論
本件売買契約は有効であり、上告人は被上告人に対し、農地法上の許可申請手続をなす義務、および知事の許可を条件とする所有権移転登記手続・土地明渡義務を負う。
実務上の射程
共有物の無権限処分における「債権的契約の有効性」を認める重要な論拠となる。答案上では、物権的効力(民法251条違反)と債権的効力(他人の権利の売買)を峻別して論じる際に活用する。また、農地売買に関する許可申請義務については、条件付請求の適格(民訴法135条)を基礎づける判例として参照される。
事件番号: 昭和41(オ)60 / 裁判年月日: 昭和41年12月1日 / 結論: 棄却
不動産の処分を委ねられた者が、代理の形式によらず自己の名で該不動産を第三者に譲渡した場合でも、所有権は本人から該第三者に移転する。
事件番号: 昭和39(オ)1051 / 裁判年月日: 昭和42年4月6日 / 結論: 棄却
畑を宅地に転用するための農地の売買契約がなされた場合において、売主が知事に対する許可申請手続に必要な書類を買主に交付したのに、買主が特段の事情もなく右許可申請手続をしないときには、売主は、これを理由に売買契約を解除することができる。
事件番号: 昭和30(オ)321 / 裁判年月日: 昭和32年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の売買において、都道府県知事の許可を停止条件とする契約を締結することは農地法(旧農地調整法)に反せず、許可が得られた場合には、売主は地目変換の申告や登記手続等の契約上の義務を履行する責任を負う。 第1 事案の概要:買主(被上告人)は、農地を工場敷地として利用するため、売主(上告人)との間で本件…
事件番号: 昭和40(オ)353 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 破棄差戻
不動産を買い受け所有権に基づいてこれを占有する買主は、売主との関係においても、自己の占有を理由として右不動産につき時効による所有権の取得を主張することができる。