不動産を買い受け所有権に基づいてこれを占有する買主は、売主との関係においても、自己の占有を理由として右不動産につき時効による所有権の取得を主張することができる。
売買契約の当事者間における買主の所有権取得時効の援用
民法162条
判旨
不動産の買主が、売買契約に基づき売主から引渡しを受けて所有の意思をもって占有を継続した場合、売主との関係でも民法162条による取得時効が成立し得る。契約当事者間においても、永続した占有状態を権利関係に高める時効制度の趣旨は妥当し、不当な不利益も生じないためである。
問題の所在(論点)
不動産の売買契約における買主が、売主との関係において、民法162条に基づき当該不動産の所有権を時効取得することができるか。本来の所有者が時効援用をなし得るかという「自己物の時効取得」の可否が問題となる。
規範
所有権に基づいて不動産を占有する者についても、民法162条の適用がある。したがって、不動産の売買契約において、買主が売主から引渡しを受け、自主占有をもって法定の期間占有を継続したときは、買主は売主との関係においても、時効による所有権取得を主張することができる。
重要事実
上告人は、相手方との間で不動産の売買契約を締結し、その引渡しを受けて占有を開始した。上告人は、その後民法162条所定の期間、当該不動産を占有し続けたとして、売主(相手方)に対し、時効による所有権の取得を主張した。しかし、原審は上告人の時効取得の主張について判断を示さなかった。
事件番号: 平成7(オ)1203 / 裁判年月日: 平成12年1月27日 / 結論: その他
一 渉外的な法律関係において、ある法律問題(本問題)を解決するために不可欠の前提問題が国際私法上本問題とは別個の法律関係を構成している場合、その前提問題の準拠法は、法廷地である我が国の国際私法により定めるべきである。 二 渉外親子関係の成立の判断は、まず嫡出親子関係の成立についてその準拠法を適用し、嫡出親子関係が否定さ…
あてはめ
時効制度の本旨は、永続する占有という事実状態を権利関係にまで高める点にある。買主が売買契約に基づき引渡しを受け、所有の意思をもって占有を継続した場合、この趣旨を拒むべき理由はない。また、時効取得を認めたとしても、契約によって生じる他の法律関係については別途相応の保護が与えられるため、当事者間の権利義務関係を不当に害することにはならない。
結論
買主は売主に対する関係でも、時効による所有権の取得を主張することができる。したがって、買主の時効取得の主張について判断しなかった原判決には違法がある。
実務上の射程
自己の所有物であっても、証拠の散逸による立証の困難を救済する等の必要性から時効取得が認められることを確認した判例である。答案上は、登記を失念した買主が売主側の相続人等と争う場面や、二重譲渡の第1買主が対抗要件を備えられなかった場合等の救済法理として活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)30 / 裁判年月日: 昭和43年4月4日 / 結論: 棄却
共有者の一人が、権限なく、共有物を自己の単独所有に属するものとして他に売り渡した場合でも、売買契約は有効に成立し、自己の持分をこえる部分については、他人の権利の売買としての法律関係を生ずるとともに、自己の持分の範囲内においては、約旨に従つた履行義務を負う。
事件番号: 昭和41(オ)352 / 裁判年月日: 昭和41年10月20日 / 結論: 棄却
競売法による競売手続において、その手続の完了前に競売の基本である抵当権が消滅した場合には、右消滅による抵当権抹消登記手続を経由すると否とを問わず、競落人は目的不動産の所有権を取得できない(昭和三七年(オ)第一一二号同年八月二八日第三小法廷判決、民集一六巻八号一七九九頁参照)。
事件番号: 昭和35(オ)1163 / 裁判年月日: 昭和36年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の目的物である土地が第三者によって競落され、当該第三者のために所有権移転登記がなされた場合、売主の債務は特段の事情のない限り履行不能に陥る。 第1 事案の概要:上告人(売主)は、被上告人(買主)に対して本件土地を売り渡したが、その後、当該土地が訴外Dによって競落された。さらに、当該土地につ…
事件番号: 昭和42(オ)1055 / 裁判年月日: 昭和46年11月25日 / 結論: 棄却
不動産の売主が売買契約の効力の発生を争うとともに仮定的にその取得時効を援用した場合に、売買契約の効力につき判断することなく、売主のため取得時効の完成を認めることを妨げない。