不動産の売主が売買契約の効力の発生を争うとともに仮定的にその取得時効を援用した場合に、売買契約の効力につき判断することなく、売主のため取得時効の完成を認めることを妨げない。
不動産の売主が売買契約の効力を争い仮定的に取得時効を援用した場合ただちに取得時効を認めることの可否
民法162条,民訴法137条
判旨
取得時効制度の趣旨は永続した占有状態を権利関係に高めることにあるため、時効取得の目的物が何人の所有に属するかを確定させる必要はない。
問題の所在(論点)
時効取得の要件として、目的物が「他人の物」であることを確定し、その所有者が誰であるかを特定する必要があるか(民法162条)。
規範
取得時効制度は、物件を永続して占有するという事実状態を権利関係にまで高めようとするものである。そのため、取得時効の目的物件が何人の所有に属していたかをあらかじめ確定する必要はない。
重要事実
被上告人の先代Dは、Eに対して本件山林の持分を売り渡したが、後にその返還を受けたと信じて昭和7年10月頃から所有の意思をもって平穏・公然かつ善意・無過失に占有を開始した。以後、Dから相続人である被上告人に至るまで他の共有者らとともに占有を継続し、10年が経過した。これに対し上告人は、D・E間の売買契約の失効による所有権の帰属を確認せずに時効完成を認めた原審の判断には理由不備があると主張した。
事件番号: 平成7(オ)1203 / 裁判年月日: 平成12年1月27日 / 結論: その他
一 渉外的な法律関係において、ある法律問題(本問題)を解決するために不可欠の前提問題が国際私法上本問題とは別個の法律関係を構成している場合、その前提問題の準拠法は、法廷地である我が国の国際私法により定めるべきである。 二 渉外親子関係の成立の判断は、まず嫡出親子関係の成立についてその準拠法を適用し、嫡出親子関係が否定さ…
あてはめ
時効取得の成立を判断するにあたって、係争物(本件山林持分)がもともと売買契約の不成立等により被上告人の側(D)に留保されていたか、あるいはEに属していたかを確定させる必要はない。Dが「所有の意思をもって」占有を開始し、10年間にわたり平穏・公然かつ善意・無過失に占有を継続したという事実状態が認められる以上、時効取得の要件を満たす。したがって、売買契約の効力に関する主張を判断せずに仮定的な取得時効の主張から検討した原審の判断は正当である。
結論
取得時効の目的物の所有権の帰属を確定する必要はなく、被上告人のために持分の取得時効が完成したとする判断は正当である。
実務上の射程
自己の物(または自己の物と信じている物)について、権利関係の立証が困難な場合に、予備的主張として時効取得を援用する際の根拠となる。実務上は、真の所有者が誰であるかを厳密に特定せずとも、占有事実と要件を満たせば時効取得が認められることを示す。
事件番号: 昭和40(オ)353 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 破棄差戻
不動産を買い受け所有権に基づいてこれを占有する買主は、売主との関係においても、自己の占有を理由として右不動産につき時効による所有権の取得を主張することができる。
事件番号: 昭和34(オ)425 / 裁判年月日: 昭和36年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権の取得時効の要件である「所有の意思」の有無は、占有取得の原因となった権原の性質により客観的に決定される。他人の留守番として土地を使用する権原は、その性質上、所有の意思を認め得ない他主占有にあたる。 第1 事案の概要:占有者Dは、被上告人から本件土地の「留守番」として使用することを許され、これ…
事件番号: 昭和33(オ)484 / 裁判年月日: 昭和36年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の時効取得の要件として、当該不動産が「他人の物」であることを判示する必要はあるが、その所有者が特定の誰であるかまでを確定する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が本件不動産の特定の前所有者についての判定を誤ったと主張し、時効取得の成否を争った。原審は、本件不動産が被上告人(時効取得…
事件番号: 昭和45(オ)265 / 裁判年月日: 昭和47年9月8日 / 結論: 棄却
共同相続人の一人が、単独に相続したものと信じて疑わず、相続開始とともに相続財産を現実に占有し、その管理、使用を専行してその収益を独占し、公租公課も自己の名でその負担において納付してきており、これについて他の相続人がなんら関心をもたず、異議も述べなかつた等原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、前記相続人はその相…