競売法による競売手続において、その手続の完了前に競売の基本である抵当権が消滅した場合には、右消滅による抵当権抹消登記手続を経由すると否とを問わず、競落人は目的不動産の所有権を取得できない(昭和三七年(オ)第一一二号同年八月二八日第三小法廷判決、民集一六巻八号一七九九頁参照)。
競売法による競売手続完了前に抵当権が消滅したがその旨の抹消登記をしなかつた場合と競落人の目的不動産の所有権取得の有無
競売法2条,民法177条
判旨
競売手続の完了前に抵当権が消滅した場合、競落許可決定が確定しても、買受人は代金の支払により不動産の所有権を取得することはできない。また、抵当権消滅の登記がない場合であっても、競落人はその消滅を対抗される対象となる。
問題の所在(論点)
抵当権消滅後に進行した競売手続により、買受人は不動産の所有権を取得できるか。また、抵当権の消滅を登記なくして競落人に対抗できるか。
規範
競売法(現・民事執行法)による競売手続において、その手続の完了前に競売の基本である抵当権が消滅した場合には、競落許可決定(売却許可決定)が確定しても、競落人(買受人)は代金の支払によって目的不動産の所有権を取得することはできない。この場合、抵当権消滅の登記の有無を問わず、無権利である競落人から順次譲渡を受けた者も所有権を取得しえない。
重要事実
不動産上の1番・2番抵当権者、所有者、及び当該不動産を買い受けた国との間で、国の支払う買受代金を抵当権者が受領することで抵当権を放棄する旨の合意が成立した。しかし、抵当権抹消登記がなされないまま競売手続が進行し、競落人(訴外金庫)への売却許可決定が確定。その後、訴外金庫から上告人らに順次転売がなされた。国は、真実の所有権に基づき上告人に対し所有権移転登記を求めて提訴した。
事件番号: 昭和50(オ)807 / 裁判年月日: 昭和51年2月17日 / 結論: 棄却
不動産の強制競売において競落許可決定が確定して競落人がその代金を全額支払い、右競落不動産の所有権を取得したときは、その後、執行債権が消滅したことを理由に強制競売手続開始決定が取り消され、競売申立が却下されても、競落の効果に影響を及ぼさない。
あてはめ
本件では、競売手続の完了前に抵当権者が抵当権を放棄し、実体法上の抵当権は消滅していた。競売の基礎となる抵当権が存在しない以上、競売手続が続行され買受人が代金を納付しても、その効果として所有権は移転しない。また、不動産上の抵当権が消滅している以上、抹消登記手続の経由を問わず競落人は所有権を取得できない。したがって、競落人は無権利者であり、そこから譲渡を受けた上告人も所有権を承継取得しえないと判断される。
結論
競落人は所有権を取得できず、その承継人たる上告人も無権利であるため、真実の所有者である国による所有権移転登記請求は認められる。
実務上の射程
抵当権の不存在・消滅という実体上の瑕疵がある競売の効力を否定する射程を持つ。買受人の公信力保護(94条2項類推適用等)が論点となる事案において、前提となる「競売による所有権取得の成否」を論じる際の基礎となる。また、真正な登記名義の回復としての所有権移転登記請求の可否についても言及しており、物権的請求権の行使態様を示す資料となる。
事件番号: 昭和40(オ)656 / 裁判年月日: 昭和41年11月10日 / 結論: 棄却
一審判決の送達が不適法であつても、控訴審において異議なく訴訟を遂行してきた以上、適法な上告理由とならない。
事件番号: 昭和40(オ)353 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 破棄差戻
不動産を買い受け所有権に基づいてこれを占有する買主は、売主との関係においても、自己の占有を理由として右不動産につき時効による所有権の取得を主張することができる。
事件番号: 昭和42(オ)30 / 裁判年月日: 昭和43年4月4日 / 結論: 棄却
共有者の一人が、権限なく、共有物を自己の単独所有に属するものとして他に売り渡した場合でも、売買契約は有効に成立し、自己の持分をこえる部分については、他人の権利の売買としての法律関係を生ずるとともに、自己の持分の範囲内においては、約旨に従つた履行義務を負う。
事件番号: 昭和41(オ)1234 / 裁判年月日: 昭和44年12月19日 / 結論: 棄却
不動産の買主がその売主に対してなしたいわゆる処分禁止の仮処分がある場合に、右不動産の他の買主が同一不動産について第二次の処分禁止の仮処分をすることは妨げられないが、第一次仮処分の債権者が、被保全権利の実現として、右売買契約に基づく所有権移転登記を経由したときは、第二次仮処分の債権者は、自己の仮処分の効力を主張して右所有…