控訴人が「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。被控訴人の附帯控訴を棄却する。」旨の裁判を求め、第一審で棄却された反訴請求には何ら言及していない場合には、右反訴請求については、不服申立の範囲外であるとして控訴審の判断が示されなくても違法でない。
控訴審における不服申立の範囲。
民訴法377条1項
判旨
農地法上の許可を停止条件とする農地の所有権移転登記手続請求および引渡請求は、将来の給付の訴えとして適法であり、裁判所はこれらを認容することができる。
問題の所在(論点)
農地法上の許可が得られていない段階で、当該許可を条件とする農地の所有権移転登記手続および引渡を求めることが、将来の給付の訴えとして許容されるか。
規範
農地法所定の知事の許可を条件とする所有権移転登記手続請求および土地引渡請求については、将来の給付を求める法律上の利益(民事訴訟法135条参照)が認められる。また、第一審が占有権限の欠如を理由に返還を命じたことと、控訴審が知事の許可を条件として引渡を命じることは、論理的に矛盾・抵触するものではない。
重要事実
上告人の代理人と被上告人との間で本件農地の売買契約が締結された。第一審は、被上告人が本件農地を占有耕作する権限を有しないとして、所有者である上告人への返還を命じた。これに対し被上告人は、知事の許可を条件とする所有権移転登記手続および農地の引渡を求めたところ、原審(控訴審)は将来の給付の訴えとしてこれを認容したため、上告人が不服を申し立てた。
事件番号: 昭和38(オ)1272 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
農地の買主は、その必要があるかぎり、売主に対し、知事の許可を条件として農地所有権移転登記手続請求をすることができる。
あてはめ
本件では、農地売買契約自体は成立しており、登記および引渡の履行を求めるための法的基礎が存在している。農地法上の許可は所有権移転の効力発生要件であるが、あらかじめその義務の履行を請求する法律上の利益が認められる。原審が、知事の許可を条件として引渡を命じた判断は、第一審が占有権限の不在を理由に返還を命じた判断と矛盾するものではなく、将来の給付を認めるべき事案に該当するといえる。
結論
知事の所有権移転の許可があることを条件として、農地の所有権移転登記手続および引渡を命じた原判決は正当である。
実務上の射程
農地法3条等の許可を要する取引において、許可取得前の段階で買主が権利を保全するために「許可を条件とする」将来の給付の訴えを提起できることを示す。実務上、執行力を確保するための標準的な構成として活用される。
事件番号: 昭和39(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: その他
現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可を条件として所有権移転登記を請求する訴訟が提起された場合には、裁判所は、宅地としての売買による所有権移転登記の請求についてまで前記条件を付する趣旨か否かを釈明して判断するのが相当である。
事件番号: 昭和36(オ)775 / 裁判年月日: 昭和38年11月12日 / 結論: 破棄自判
知事の許可を条件とする農地の売買契約において、これを転売したときには売主は直接転買のために右許可申請手続をする旨の合意をしても、右合意はその効力を生じない。
事件番号: 昭和39(オ)1397 / 裁判年月日: 昭和41年2月24日 / 結論: 棄却
知事の許可なくしてなされた農地の売買契約においても、特段の事情のないかぎり、売主は知事に対し所定の許可申請手続をなすべき義務を負い、また、もしその許可があつたときは、買主のため所有権移転登記手続をなすべき義務を負担するに至るものと解するのが相当である。