農地の売買に基づく県知事に対する所有権移転許可申請協力請求権の消滅時効期間が経過してもその後に右農地が非農地化した場合には、買主に所有権が移転し、非農地化後にされた時効の援用は効力を生じない。
農地の売買に基づく県知事に対する所有権移転許可申請協力請求権の消滅時効期間の経過後に右農地が非農地化した場合における所有権の移転及び非農地化後にされた時効援用の効力の有無
民法145条,民法167条1項,農地法3条1項
判旨
消滅時効の効果は援用により確定的に生じるため、農地売買における許可申請協力請求権の時効期間経過後であっても、援用前に土地が非農地化した場合は、売買契約は当然に効力を生じ所有権が移転する。
問題の所在(論点)
農地売買における許可申請協力請求権の時効期間が経過した後に、時効の援用がないまま土地が非農地化した場合、売買契約の効力および所有権の帰属はどうなるか。
規範
時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずる(民法145条)。したがって、農地の買主が有する許可申請協力請求権の時効期間が経過しても、援用前に当該農地が非農地化したときは、その時点において農地法上の制限を離れ、売買契約は当然に効力を生じ、買主に所有権が移転する。
重要事実
Dは昭和31年にEへ農地である本件土地を売り渡し、代金全額を受領して仮登記を了したが、農地法上の許可は未取得であった。買主の地位を承継したFの相続人(上告人)が土地を占有していたが、売主Dの相続人(被上告人)は、売買から10年以上経過した昭和51年の提訴時に、許可申請協力請求権の消滅時効を援用した。一方、上告人は、当該土地が昭和46年時点で既に原野となり非農地化していたと主張した。
事件番号: 昭和44(オ)498 / 裁判年月日: 昭和44年10月31日 / 結論: 棄却
現況が農地である土地を目的とする売買契約締結後に、右土地を含む周辺一帯が都市計画区域に指定され、順次宅地として分譲されるなど客観的事情が変化し、かつ、買主がこれに地盛りをして売主の承諾のもとに建物を建築するなどしたために、右土地が完全に宅地に変じた場合には、右売買契約は、知事の許可なしに効力を生ずるものと解すべきである…
あてはめ
被上告人が時効を援用したのは昭和51年であるが、上告人の主張によれば本件土地は昭和46年に非農地化している。時効の効果は援用により初めて確定するため、昭和46年時点では協力請求権は消滅していない。そして、非農地化した時点で農地法上の許可は不要となるため、売買契約の停止条件が成就したのと同様に、契約は当然に効力を生じ、所有権は買主側に移転する。一度所有権が移転すれば、その後に売主側が消滅時効を援用しても、既に失った所有権を回復する効果は認められない。
結論
時効援用前に土地が非農地化していたのであれば、売買契約は有効となり所有権は買主に移転している。したがって、その後の時効援用は認められず、被上告人の明渡請求等は認められない。
実務上の射程
時効の効力発生時期(不確定効果説・遡及効)に関する基本判例。農地売買に限らず、権利の行使を条件とする法律関係において、援用前に状況の変化(条件成就等)が生じた場合の処理として応用できる。
事件番号: 昭和47(オ)620 / 裁判年月日: 昭和49年12月24日 / 結論: 棄却
金銭債権の担保のため債務者所有の不動産に所有権移転請求権保全の仮登記をするのに代えて、他の債権者の債権担保のため所有権移転請求権保全の仮登記が被担保債権の消滅にもかかわらず残存しているのを利用して新債権者への右請求権移転の附記登記をした場合、附記登記後に右不動産につき利害関係を有するにいたつた第三者は、特別の事情のない…
事件番号: 昭和57(オ)578 / 裁判年月日: 昭和60年11月26日 / 結論: 棄却
仮登記担保権の設定された不動産の第三取得者は、当該仮登記担保権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
事件番号: 昭和43(オ)1167 / 裁判年月日: 昭和44年9月11日 / 結論: 棄却
譲渡令による強制譲渡手続が譲渡令書の未交付の状態において譲渡令が廃止され、農地法が施行された場合は、該強制譲渡の手続を受け継ぐ手続は、農地法施行法一三条による農地法一五条およびこれに関連する法令による手続である。
事件番号: 昭和41(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: 棄却
不動産の譲受人を債権者とし譲渡人を債務者として右不動産について処分禁止の仮処分登記が経由され、その後第三者に対する所有権移転登記が経由された場合において、仮処分債権者たる譲受人より譲渡人に対する本案訴訟としての所有権移転登記手続請求の訴と右第三者に対する所有権取得登記の抹消登記手続請求の訴とが併合して審理され、仮処分債…