共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しない。
共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者と遺産確認の訴えの当事者適格
民訴法第1編第3章 当事者,民訴法40条,民訴法134条,民法898条,民法905条
判旨
遺産確認の訴えは固有必要的共同訴訟であるが、自己の相続分の全部を譲渡した共同相続人は、遺産全体の割合的持分を全て失い遺産分割を求めることができなくなるため、当該訴えの当事者適格を失う。
問題の所在(論点)
遺産確認の訴えが固有必要的共同訴訟とされる中で、自己の相続分の全部を譲渡した共同相続人が、なお同訴えの当事者適格を有するか。また、その者に対する訴えの取下げの可否が問題となる。
規範
遺産確認の訴えは、特定の財産が遺産分割の対象か否かを既判力をもって確定し、共同相続人間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟である。しかし、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、遺産全体に対する割合的な持分を全て失い、遺産分割審判等の手続で分割を求めることができない。したがって、その者との間で遺産帰属性を確定すべき必要性はなく、当該譲渡人は遺産確認の訴えの当事者適格を有しない。
重要事実
亡Aの共同相続人である原告ら(被上告人ら)は、他の共同相続人である被告ら(上告人ら)およびEらに対し、本件不動産がAの遺産であることの確認を求めて提訴した(第1事件)。訴訟係属後、Eらが自己の相続分の全部を他の共同相続人に譲渡していたことが判明したため、原告らはEらに対する訴えを取り下げた。原審は、遺産確認の訴えが固有必要的共同訴訟であることを理由に、Eらも当事者適格を失わず、訴えの取下げは効力を生じないと判断して第1審判決を取り消したため、被告らが上告した。
あてはめ
本件において、Eらは自己の相続分の全部を譲渡している。この場合、Eらは積極財産・消極財産を包括した遺産全体に対する持分を完全に喪失しており、後の遺産分割手続等において本件不動産の分割を求める地位にない。そうであれば、Eらを被告に含めて合一に確定すべき必要性は消失しているといえる。したがって、Eらは第1事件の当事者適格を有しない。当事者適格のない者に対する訴えの取下げを制限する理由はないため、原告らによるEらへの訴え取下げは有効と解される。
結論
共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、遺産確認の訴えの当事者適格を有しない。したがって、Eらに対する訴えの取下げは有効であり、原審の判断には法令の違反があるとして破棄差戻しを免れない。
実務上の射程
遺産確認の訴えの被告適格を画定する基準となる。固有必要的共同訴訟であっても、相続分譲渡により紛争の主体から離脱した者の当事者適格を否定し、訴訟からの合法的離脱(取下げ)を認めた点に実務上の意義がある。答案では、固有必要的共同訴訟の一般論を述べた後、相続分譲渡による当事者適格の喪失を例外的なあてはめとして論じる際に用いる。
事件番号: 昭和60(オ)727 / 裁判年月日: 平成元年3月28日 / 結論: 棄却
共同相続人間における遺産確認の訴えは、固有必要的共同訴訟と解すべきである。
事件番号: 平成23(受)1626 / 裁判年月日: 平成24年12月21日 / 結論: その他
共有者の1人が共有物を第三者に賃貸して得る収益につき,その持分割合を超える部分の不当利得返還を求める他の共有者の請求のうち,事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しない。 (補足意見がある。)