賃貸借契約終了または所有権に基づく家屋明渡請求権を共同相続した者の賃借権者または不法占有者に対する家屋明渡請求訴訟は、必要的共同訴訟ではない。
賃貸借契約終了または所有権に基づく家屋明渡請求権を共同相続した者の賃借権者または不法占有者に対する家屋明渡請求訴訟は必要的共同訴訟か
民訴法61条,民訴法62条
判旨
建物の共同相続人による明渡請求権は不可分債権に属するため、各相続人は単独で全部の明渡を請求でき、その訴訟は固有必要的共同訴訟ではない。また、相続開始後に発生した損害金債権は、遺産分割協議により特定の相続人が承継する合意が成立した場合には、その合意に従って帰属する。
問題の所在(論点)
1. 共同相続人による建物の明渡請求訴訟が固有必要的共同訴訟にあたるか。 2. 被相続人の死亡により発生した損害金債権について、一部の相続人による請求が認められるか。
規範
1. 建物の共有持分権に基づく明渡請求権は、性質上不可分債権(民法428条)に属し、各共有者は単独で全部の明渡を請求し得るため、共同相続人全員が原告となるべき固有必要的共同訴訟ではない。 2. 相続財産から生じる損害賠償債権(不当利得返還請求権等)は原則として分割債権となるが、遺産分割協議において、特定の相続人が当該債権を承継する旨の合意が成立した場合には、その合意に基づき特定の相続人に帰属する。
重要事実
家屋の所有者Dが訴訟継続中に死亡し、被上告人らを含む計9名が共同相続した。第一審は、相続人のうち一部(被上告人ら)のみに対し、上告人らへの家屋明渡と損害金の支払を命じた。上告人らは、相続人全員が訴訟に関与すべき必要的共同訴訟であること、および損害金債権は分割承継されるべきであることを理由に、第一審判決の違法を主張した。なお、控訴審継続中に遺産分割協議が整い、被上告人らが家屋の共有持分を取得し、損害金債権も同割合で承継する合意が成立していた。
事件番号: 昭和39(オ)1161 / 裁判年月日: 昭和43年5月28日 / 結論: 棄却
右の場合には、いわゆる固有必要的共同訴訟ではない。
あてはめ
1. 共同相続人が承継した家屋の明渡請求権は、性質上「不可分債権」にあたる。したがって、各相続人は自己の権利として単独で全部の明渡を請求できるため、相続人全員が足並みを揃えて提訴する必要はなく、固有必要的共同訴訟ではない。よって、被上告人らのみを対象とした判決に違法はない。 2. 損害金債権について、当初は分割債権として各相続人に帰属していたが、原審(控訴審)の口頭弁論終結時までに、遺産分割協議によって被上告人らが特定の割合で承継する旨の合意が成立している。この事実に基づけば、被上告人らが当該割合で損害金を請求できるとする結論は、口頭弁論終結時において正当化される。
結論
本件訴訟は必要的共同訴訟ではなく、被上告人らのみによる請求は適法である。また、損害金債権も遺産分割協議の結果に基づき、被上告人らへの支払を命じた結論は正当として、上告を棄却する。
実務上の射程
共有物(相続財産)の返還・明渡請求が保存行為としての性質を有し、単独で提訴可能であることを再確認する射程を持つ。また、相続開始後の損害金(賃料相当損害金等)は本来分割債権であるが、遺産分割協議の対象として遡及的に帰属を確定させる実務上の処理を容認する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)208 / 裁判年月日: 昭和42年8月25日 / 結論: 棄却
使用貸借契約の終了を原因とする家屋明渡請求権は性質上の不可分給付を求める権利と解すべきであつて、貸主が数名あるときは、各貸主は総貸主のため家屋全部の明渡を請求することができる。