使用貸借契約の終了を原因とする家屋明渡請求権は性質上の不可分給付を求める権利と解すべきであつて、貸主が数名あるときは、各貸主は総貸主のため家屋全部の明渡を請求することができる。
貸主が数名あるときの家屋明渡請求権と不可分給付を求める権利
民法428条
判旨
使用貸借契約の終了に基づく建物の明渡請求権は、性質上の不可分給付である。したがって、各共有相続人は、他の相続人のために建物全部の明渡を請求することができる。
問題の所在(論点)
共有相続人が、使用貸借契約の終了に基づく債権的請求権として建物の明渡を求める場合、各相続人は自己の持分を超えて建物全部の明渡を請求できるか。建物の明渡請求権が不可分債権といえるかが問題となる。
規範
共同相続人が有する債権的請求権であっても、その目的が建物の明渡である場合、その性質上、各債権者が全員のために全部の給付を請求できる「不可分債権」(民法428条参照)にあたる。
重要事実
建物所有者Eは、Fに対し本件建物を使用貸借により貸与していた。Eの死亡により、被上告人らがその地位を承継した。被上告人らは、使用貸借契約の終了を原因として、占有者である上告人らに対し、本件建物の全部明渡しを求めて提訴した。
あてはめ
被上告人らの明渡請求は、使用貸借契約の終了という債権的根拠に基づくものである。建物の占有を解いてこれを返還するという給付は、その性質上、分割して履行することが不可能であり、不可分給付と解される。したがって、各明渡請求権者は、他の共有者のためにも、建物全部の明渡しを求めることができるというべきである。
結論
被上告人らによる建物全部の明渡請求は認められる。各請求権者は総明渡請求権者のために全給付を請求し得るため、原判決に違法はない。
実務上の射程
共有不動産の明渡請求において、物権的請求権(保存行為)に基づく場合は民法252条ただし書が根拠となるが、契約終了等の債権的請求権に基づく場合は本判例の「性質上の不可分債権」の理屈を用いて全部請求を肯定する。答案上は、請求の根拠(物権か債権か)を区別した上で本法理を適用すべきである。
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地代家賃統制令による停止統制額のある土地を不法占有する者に対する損害賠償額は、該土地を新たに更地として賃貸することが予見される等の事情のもとでは、右停止統制額によらないで判定されてかまない。